なぜ「電気使用料金の値上げ」が受け入れられないのか?
――「キャッシュバック制」の導入で、
善意の節電努力が報われる「公平な仕組み」を――

 震災によって電力供給量が大幅に落ち込む中、東京電力管内における夏季の電力不足が問題となっています。果たして大規模停電を防ぐ手立てはあるのでしょうか。本稿では、経済学、そして人間心理を踏まえた行動経済学の知見を用いた政策提言を行います。

 前編となる今回は、計画停電や「一律25%節減」という政府案、経済学者が提案している「電気料金の値上げ」など、現在噴出している様々な議論を俯瞰するとともに、経済学者が提案する電気料金の値上げがなぜ受け入れられないかを解説し、国民感情にも留意した「キャッシュバック制」の導入を提案します。

タイムリミットは今夏
広域停電は避けられるか?

 現在、東京電力管内における夏季の電力不足が問題となっています。

 震災直後の電力不足に、東京電力は緊急対策として「計画停電」という方法で対応しました。結果として、信号機や医療機関、建設資材などの復興に必要な産業生産などへの電力供給もストップし、社会に大きな混乱を招きました。

 4月に入り、暖房の電力需要が低下したことや、電力の供給能力が増強されたこともあり、電力不足問題は一時的に解消されていますが、夏場になるとエアコン等の電力需要の増加から、再び電力不足が生じることが予想されています。

 東京電力管内で瞬間の電力消費量(kW)が電力供給量を上回ってしまうと、予期せぬ広域停電が生じてしまいます。この事態だけは絶対に避けなければなりません。その意味では震災直後の計画停電はやむを得なかったのかもしれません。

 とはいえ、夏場までは若干の時間の余裕があります。この危機を乗り越える最良の方法を、国民の叡智を結集して探し出す必要があります。