しかし当時の中国で、ネット上にお金を置いておくなんて危険なこと、外国人どころか中国人も誰もやらず、私も買い物と同額の最低金額だけチャージしていた。

 それを大きく変えたのが、余額宝という、タオバオの独自ファンドである。

 確か初期は7〜8%を超える利率で、タオバオの信用が徐々に付いてきたこともあり、こうなると一気に1000万円などの額を預けるユーザーが続出した(注:外国人は今も昔もできません)。

 やがて銀行カードと紐(ひも)づけになり、スマホが出てきて、QRコード支払いが始まり、本当に便利になった。

政府は民間企業を
利用してきた

 実はこういう技術開発は、古くからの社員や養わなければならない官をたくさん抱えた国有企業では、やりにくい。

 そこで、民間企業を利用してきたともいえる。

 巨大企業に育っていきつつあるアリババを見ながら、政府の誰かがこう考えたのだと思う。

「アリババは、タオバオを通して今はほぼ全国民の消費情報と住所、金融情報を押さえている。我々の金儲けだけでなく、人民の管理にも大いに利用できる」

 現在、アリババには社内にも警察組織があり情報を提供していると、これはウォールストリート・ジャーナルが2017年12月4日に報道している。

 もちろん投資もしている。アリババの上場について太子党の関与が一時、報道され、江沢民派だと話題になったが、私はそういうのはもう多少古い話だと思う。

 日本では中国の派閥争いがよく言われるが、“革命の勇士”、つまり武力でこの場所を獲った人々の子孫はしょせん、皆さん、お友達。

 取り合ったりはしているが、結論冒頭の“すべては党が管理する”なのである。

 父親が深センで港湾関係の幹部をしていたこともある党員で、自分も大学時代に入党しているテンセントの創業者、馬化騰はアジア有数の金持ちになった。