“中国の夢”というのは習近平たちが唱えている中国が世界を覇権する中国の美しい未来である。その美しすぎる未来に人民が逆らおうにも、すでにAI顔認証で包囲されている。
逆らえば、日頃使うスマホから顔写真をインプットされたハエほどのドローンがひゅーんと飛んできて、どこに逃げようと額をバキューンと撃ち抜く……、日も遠くない。
あ、もう始まってる?
そして中国に逆らえなくなるのは、人民だけではない。
日本企業も、一般消費者だけではなく、中国企業が大きなお得意様になった。
その企業からの広告費で、平均サラリーマンの4〜5倍の給料をもらってきた一部の大手メディアは、今度は中国企業にも目がキラーン。取材しても読者の食いつき、いいし……。
日本進出を目論(もくろ)む中国企業は、それを逆手にとるだろう。
中国現地にいる日本の官僚は、日本企業への天下りの手土産に、中国の官と中国企業とのコネをつけるのに忙しい。
日本官僚の派遣先として今、中国は大人気だそうで、今や在中国日本大使館は、世界中の日本大使館で一番職員の人数が多い。
で、現地の日本人の彼らがこぞってやっているのは「日本はもうダメ」と見切って、自分の子どもに、英語と中国語を徹底的に仕込むこと。
培った中国コネを生かした明日の中国的ファミリービジネスを目指して……。
本当に怖いのは、日本で、ふと気がつけば中国企業のサービスに首まで漬かって、取り残される皆さんかもしれない。
作家、(株)ダイエーと中国の合弁商社勤務後、作家に。松竹で映画化された『中国てなもんや商社』(文藝春秋)『日本人の値段』(小学館)『本当は中国で勝っている日本企業』(集英社)など著書多数。2001年から北京大学留学を経て北京在住。ツイッターのアカウントは @tanizakihikari オフィシャルブログ「谷崎光の中国日記」