INSEAD在学時代にチャン・キム教授に師事し、『ブルー・オーシャン・シフト』の日本企業ケースを執筆したムーギー・キム氏と『[新版]ブルー・オーシャン戦略』を監訳した入山章栄氏。二人が共通してブルー・オーシャン企業だと考える新日本プロレスを軸に、ブルー・オーシャン戦略のポイントについて語る。(構成:肱岡彩)

スポーツエンターテイメント業界のブルー・オーシャン企業は「新日本プロレス」

最強のブルー・オーシャン戦略事例、新日本プロレスから学べること入山章栄(いりやま・あきえ)
1996年慶應義塾大学経済学部卒業。1998年同大学大学院修士課程修了。三菱総合研究所を経て、米ピッツバーグ大学経営大学院博士課程に進学。2008年に同大学院より博士号(Ph.D.)を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールのアシスタントプロフェッサーに就任。2013年から現職。Strategic Management Journalなど国際的な主要経営学術誌に論文を発表している。専門は経営戦略論および国際経営論。主な著書に『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』(日経BP社)、『世界の経営学者はいま何を考えているのか』(英治出版)が、監訳に『[新版]ブルー・オーシャン戦略』ある。

入山:私がブルー・オーシャン戦略を真面目に知ったのは、実は2016年に発売された『[新版]ブルー・オーシャン戦略』の監訳を頼まれたことが、きっかけだったんです。ブルー・オーシャン戦略という言葉はもちろん知っていたのですが、私はブルー・オーシャンの本に関しては、それまで読んだことがなかったんです。

とはいえ、『ブルー・オーシャン戦略』は世界で440万部も売れて、ビジネスパーソンを中心に、非常に大きなインパクトをもたらしていますよね。そして監訳の依頼を機に読んでみたんです。そしたら、とても面白い!それで、監訳を引き受けようと思ったんです。

ムーギー:入山先生が書かれた「監訳者による序文」では、日本のブルー・オーシャン候補事業・企業が紹介されていますね。今回『ブルー・オーシャン・シフト』も、日本での刊行にあたり、日本オリジナルの企業ケースを収録しているんです。

入山:はい、日本のビジネスパーソンにも本の内容を具体的に想像してもらいたくて、新版では、私の独断で「現代の日本のブルー・オーシャン事業候補」というのを17つ選びました。

『ブルー・オーシャン・シフト』で登場している企業と、私が『[新版]ブルー・オーシャン戦略』で選んだ企業は、共通しているものもあって、ムーギーさんとすごく目線が合っているな、と思いましたよ。

ムーギー:特に印象深い、日本のブルー・オーシャン企業はありますか。

入山:もちろんスタディサプリなど、素晴らしい事業は幾つもあるのですが、敢えてあげるとすれば、例えば新日本プロレスでしょうか。私が選んだ17の事業にも入っていますし、その後で、新日本プロレスを再生させた木谷会長とも対談させてもらいました。

最強のブルー・オーシャン戦略事例、新日本プロレスから学べることムーギー・キム
ブルーオーシャングローバルネットワーク。
慶応義塾大学総合政策学部卒業。INSEADにてMBA(経営学修士)取得。外資系コンサルティングファーム、投資銀行、米系資産運用会社、香港でのプライベートエクイティファンド投資、日本でのバイアウトファンド勤務を経て、シンガポールにてINSEAD 起業家支援企業に参画。
INSEAD時代にチャン・キム教授に師事し、ブルーオーシャングローバルネットワークの一員として、新刊『ブルー・オーシャン・シフト』では、付録の日本ケースの執筆を担当している。著書に『一流の育て方』(ダイヤモンド社)『最強の働き方』(東洋経済新報社)、『最強の健康法』(SBクリエイティブ)などがある。』

ムーギー:いや私ね!あの対談をみて見て入山先生のファンになったんですけど(笑)実は私、プロレスファンなんですよ。

高校生の時に英語に目覚めたのも、実はプロレスがきっかけなんです。プロレスを見ていると、一生懸命ハルク・ホーガンが叫んでいる。けれども、何を言っているのか分からない。それを聞き取りたいがために、英語を頑張ったんですよね。私の国際化の礎は、実はハルク・ホーガンとアンドレ・ザ・ジャイアントなんです。

入山:おー、そうでしたか!『[新版]ブルー・オーシャン戦略』の冒頭に、サーカスのシルク・ドゥ・ソレイユの例が出てくるじゃないですか。私はこの事例を読んだ瞬間に、「これ、日本なら新日本プロレスのことだ!」と思って。

ムーギー:いや、ほんとに新日本プロレスは、ブルー・オーシャン・シフトがものすごくハマる例なんですよね。新日本プロレスを事例にブルー・オーシャン戦略を語りたいんですけど。

入山:もちろんです。日本で昔からあるプロレス団体と言えば、ジャイアント馬場の全日本プロセスと、アントニオ猪木が作った新日本プロレスですよね。もともとムーギーさんは、全日派だったんですか?それとも新日派?

ムーギー:両方好きだったんですよね。特にね、私のピークはバンバン・ビガロとビッグバン・ベイダーがいた頃です。

入山:というと、闘魂三銃士の前の時代くらいですか。(注:闘魂三銃士とは、1984年に新日本プロレスに同期入門した武藤敬司、蝶野正洋、橋本真也の3人を指す。)

ムーギー:闘魂三銃士の前から観ていましたね。私が部活動とかで海外に行っている時にも、母に電話して、「母さん、ビガロと長州どっちが勝ったの?」とわざわざ聞くくらい。今思えば、それを聞いても全く仕方ないんですけど(笑)。母が国際電話で「バンバン・ビガロ、体固め、8分51秒」とか話しているんですよね、今考えると相当シュールです。

入山:ははは。懐かしいですね~、バンバン・ビガロね!