コンビニより多い6万店にメス、調剤薬局3万店への大淘汰

コンビニよりも多い約6万店――。増え過ぎた薬局にメスが入ろうとしている。とりわけ厳しい目が向けられているのが、病院の前に乱立する門前薬局だ。医薬分業という国策に乗って増殖した薬局が、3万店まで淘汰されるという声もささやかれ始めた。(ダイヤモンド編集部 大矢博之)

5万9000店を超え
コンビニよりも多い薬局

 「もともと役割が全く違う。コンビニと比べられるのはまだしも、まさかガソリンスタンドと薬局が比較されるなんて――」。ある大手薬局の幹部はこう不満を募らせる。

 5万5000店を超え、飽和が叫ばれるコンビニ。人手不足や出店競争激化による食い合いなどの弊害が露呈する中で、コンビニよりも数が多い店がある。それが、医師の処方箋に基づいて医療用医薬品の調剤ができる調剤薬局だ。

 厚生労働省がまとめた最新の薬局数は5万9138店(2017年度末時点)で、前年度から460店増えた。同時期のコンビニの5万6334店よりも多いのだ。

 増え過ぎた薬局は、社会保障費の抑制を目指す政府の格好のターゲットだ。4月23日、予算方針を審議する財政制度等審議会財政制度分科会。この場で財務省が提出したのが、薬局と他業種の店舗数を比較する、冒頭の大手薬局幹部を嘆かせる資料だった。

 財務省の資料では、薬局とコンビニ、郵便局、右肩下がりのガソリンスタンドの推移をグラフで比較した上で、「開設許可に需給面からの規制がなく、薬局数が増加。コンビニや郵便局、ガソリンスタンドよりも多い」と指弾している。

 この財務省の戦略が功を奏したのか、政府が6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2019(骨太の方針)」では、「薬局における調剤の実態や報酬体系を踏まえ、調剤料などの技術料について、意義の検証を行いつつ適正な評価に向けた検討を行う」と、調剤料が名指しで標的にされた。“霞が関用語”で「適正な評価」は、引き下げの意味に他ならない。

 今秋から検討が始まる20年度の診療報酬改定で、薬局の収入源となる調剤報酬は、ほぼ間違いなく減らされる方針だ。「産めよ増やせよの時代は終わった。薬局運営は非常に厳しくなり、サバイバルゲームに突入する」。別の大手薬局幹部は、こう危機感を募らせる。

 増え過ぎた薬局にメスを入れるべく、始まった政府主導での薬局つぶし。ただ、ここまで薬局が増えたのも、国の施策が後押ししてきたからだ。