企業から個人への送金に商機あり
LINE Pay、規制緩和見据え新規参入

銀行業界でフィンテック企業の挑戦者たちが見いだした商機、freee・LINE…LINE Payのプロダクト室で新たな送金サービスを立ち上げた池田憲彦室長 Photo by M.S.

 スマホで決済できるPayPayにLINE Pay、楽天ペイ。数百億円規模の還元キャンペーンの効果もあり、群雄割拠のキャッシュレス決済が盛り上がっている。

 キャッシュレス決済も銀行が持つ預金や決済機能を揺るがす動きの一つとなっている。

 LINE Payの池田憲彦プロダクト室室長が取り組んだのは、スマホ決済を使った企業から個人への送金サービスだ。「働き方の多様化で、企業から個人への小口送金の需要が大きくなっている」と池田氏は指摘する。

 クラウドソーシングで業務を請け負い、日払いや週払いで報酬を受け取りたいフリーランスのニーズ。アフィリエイトの副業やフリマアプリの普及などを具体例として挙げる。

 企業から個人への送金は、2年ほど前から事業化の準備が始まった。だが、矢継ぎ早に新規事業を打ち出すLINEグループにあって「途中で開発の優先順位が一気に下がる局面もあった」(池田氏)と苦しい時期を振り返る。

 当初の想定とは異なり資金移動業の規制を受けることになって、送金する企業の確認手続きがネット上で済ませられなくなる誤算もあった。それでも何とか今年7月のサービス開始にこぎ着けた。

 デジタルマネーで給与を払えるようにするための、規制緩和の議論が盛り上がっているのも追い風だ。現在は労働基準法で「給与は現金」というのが原則となっており、給与振込口座は銀行に独占的な地位を与えている。

 今年中に規制緩和されるとの見方が広まった時期もあったが、銀行側の巻き返しもあり現時点では時期は未定だ。ただ、それでも緩和の方向性は変わらないだろう。

 池田氏は「規制に守られている銀行と違い、われわれは柔らかな考え方で斬新なことができるはず」と将来の緩和を見据え準備に余念がない。こうした新興企業の試行錯誤が新しい事業の創出につながっている。それは、銀行を離れる人たちの新たな雇用を生み出す原動力にもなっているのだ。

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