キャッシュレス決済は消耗戦
LINEペイ「300億円祭り」で営業赤字524億円

 一方、メッセージアプリで一発当てたLINEもまた、サービスの幅を広げ、スーパーアプリを目指していた。ショッピングのほかにも、金融関係では昨年10月に損保ジャパン日本興亜と組んで「LINEほけん」のサービスを開始し、今年8月には野村HDとLINE証券を始めた。また、みずほフィナンシャルグループとLINE銀行の発足準備を進めている。

 LINEニュースやゲームなど、一定のユーザーを獲得して成功している領域もあるが、多くはまだまだ発展途上だ。16年にはLINEモバイルを設立してMVNO事業に参入したが、最終的にソフトバンクに身売りする形となった。

 現状のLINEの収益を支えるのは広告やゲーム、漫画などのコンテンツであり、LINEが抱える膨大な顧客基盤の活用を目論むものの、投資先行で苦戦が続いている。

 とりわけ先行きが不透明なのが決済分野だ。キャッシュレス決済サービス「LINEペイ」は14年にサービス開始以降、着実に育ててきたのだが、ここにきて熾烈な競争に巻き込まれている。昨秋デビューしたペイペイが、支払額の一部を還元する「100億円キャンペーン」を連発して急成長したことに煽られたのか、LINEペイも今年5月に「300億円祭り」で対抗。体力勝負の消耗戦に突入した。

 LINEの19年12月期第3四半期までの9カ月間で、売上高1667億円に対して営業赤字は275億円。広告などのコア事業は249億円の営業黒字だったにもかかわらず、LINEペイを含む戦略事業が524億円の営業赤字で、LINEペイの出血が大きな痛手になっている。

 ペイペイもまた、20年3月期第2四半期までの6カ月間で売上高15.9億円に対して345億円の営業赤字を計上。とはいえ、年間の売上高が9兆円を超えるソフトバンクグループにしてみれば、ペイペイの出費の痛みはLINEほど大きくない。

 スーパーアプリを目指すソフトバンクにとって、LINEは喉から手が出るほど欲しい存在だ。8200万人の顧客基盤に対してフルサービスを提供する余力に乏しいLINEの思惑とマッチしたことが、今回の経営統合を後押ししているのだろう。