グロービス・キャピタル・パートナーズ 代表パートナーCOO 今野穣

■2019年の振り返り

 特定の領域で新たな盛り上がりはなく、ここ数年のSaaSブームが継続したという印象。具体的には、アプリCMSのヤプリ(「Yappli」)や、施工管理のオクト(「ANDPAD」)の注目度が高かった。コンシューマ向けの数少ないキーワードとして挙げられるDtoCは、その本質を突いたスケーラブルなモデルは多くなかった。ネットとリアルの融合領域では、大手企業との大型資本業務提携が増加したのも特徴(akippaリノベるなど)。

■2020年のトレンド予測

 2020年は、「大手企業(日系エスタブリッシュメント企業、外資系巨人〈GAFAMなど〉、大手インターネット企業)」の動きが鍵になる。

 具体的には、(1)ソフトバンク・ヤフー連合の2019年の積極的なM&A(投資)や経営統合がどのような影響をもたらすのか。(2)損保ジャパン日本興亜をはじめとした積極的なオープンイノベーションが、景気変動などの影響を乗り越えてサステナブルなものとなるのか。(3)「永遠のPoC」と揶揄されることもある大手企業との事業連携がスケーラブルなものになるのか 。(4)GAFAMの動きの影響で陳腐化(コモディティ化)する領域(例えばAI関連)や、新たに立ち上がる市場(例えばxR(VR/AR/MR領域)はどこなのか。(5)大手企業自身のDX(デジタルトランスフォーメーション)は本当に/どのように進むのか。といった点である。

 そのような状況下で個人的に注目しているのは、和製パランティアとも称しているFLYWHEEL社である。上記論点に対するEnablerとして、試金石ともなる重要な役割を占める可能性も秘めていると思料する。

 2019年に引き続き、産業変革系の注目領域という意味では、ヘルスケア領域が熱い。高齢化社会・社会保障費という国家的な課題、既存大手が多くなく、デジタライゼーションが遅れているというホワイトスペースの存在は、景気変動の影響も受けにくく着実に浸透していくと思われる。

F Ventures 代表パートナー 両角将太

■2019年の振り返り

 2019年は上場ラッシュが続き、6〜7年前にスタートアップとして開発に取り組んでいた企業がいくつも花開いた令和元年になりました。法人向けSaaSは飽和気味になりつつありますが、「always LUNCH」や「PREMY」などの個人向けサブスクリプション化サービスが目立った印象でした。

■2020年のトレンド予測

 Facebookの「Oculus Quest」の好評や、AppleによるARグラスのリークなどは、数年後のコミュニケーションデバイスの変化を匂わせています。スマホから新しいデバイスに移行するにはさすがにまだ早いですが、AR/VRが(そろそろ)アーリーアダプター以降にまで拡がってくる時期かなと考えています。同時に、デバイスが変わるごとに生まれる、新たな広告やセキュリティ等の事業が立ち上がってくると思っています。

 また、「Uber Eats」や「タイミー」などにより、空き時間を利用して個人が複数の依頼者から単発の仕事を受注するギグエコノミーがさらに拡大するでしょう。そういった新しい働き方が一般化する中で、従来存在しなかった需要も生まれ、単発ワーカー向けの周辺サービスも生まれてくるのでは、と思っています。たとえば、単発ワーカー向けの保険や福利厚生など。

ドーガン・ベータ 代表取締役 パートナー 林龍平

■2019年の振り返り

 我が国の社会課題の多くは地方に眠っているとの仮説のもとに投資活動を進めており、今年は、特に農林水産業などアップデートの遅れている産業のバリューチェーンにDXをもたらすような起業家を数多く支援してきました。また、いろいろな業種・職種で深刻化しつつある人材不足問題に対し、雇用形態の多様化や業種特有の非効率業務の改善など、あらゆる手段を講じる必要があると感じており、この領域への投資を積極的に行いました。

■2020年のトレンド予測

 引き続き、地方の課題解決にフォーカスした投資活動を進めていきたいと思っています。例えば、第一次産業にはまだまだ非合理的・非効率な部分が多く残されており、現場をじっくりと観察することで見えてくる解決の糸口が多くあるのではないかと考えています。AIによる生産管理・出荷予測や、ロボティクス・IoTを活用した作業効率の最適化、生産者から消費者までのバリューチェーンの効率化など、他の産業以上に改善の余地は多く残されています。これ以上の先送りは許されないと、現場に入り込んで課題解決に取り組む熱意ある起業家も増えてきており、これまでICT導入に懐疑的だった現場の空気感も変わりつつあり、これまで点在していたソリューションが線につながっていく年になるのではと思います。