企業スポーツで日立は11、シャープは0
大手電機は対応二手に分かれる

 企業がスポーツを支援する理由としてよくいわれる3要素は、「企業のブランド価値や知名度の向上」「社員の団結力アップ」「社会貢献」。

 いずれも費用対効果が判然とせず、企業価値の最大化に寄与しているかどうかは、疑問符を付けざるを得ない。だからこそ経営不振の折には、容赦なく休部や廃部に追い込まれる。

 ダイヤモンド編集部はパナソニックなど、大手電機の企業業績、国内連結従業員数、スポーツ種目数(出資するプロスポーツを含む)を比較してみた。業績は企業スポーツの存続と経営体力の関係、従業員数は企業スポーツの存在理由の一つ「社員の団結力アップ」との関係(ダイヤモンド編集部は「団結力アップには従業員数に比例してスポーツ種目数が必要」だという仮説を立てた)を見るためである。

 企業における適正なスポーツ種目数を測る「物差し」はないとはいえ、熱心なグループ(日立製作所〈11種目+プロサッカー+プロバスケ〉、パナソニック〈7種目+プロサッカー〉、三菱電機〈4種目+プロバスケ〉)に対し、消極的なグループ(ソニー〈3種目〉、シャープ〈0種目〉)という違いが浮かび上がる。ちなみに東芝は経営不振でも「数億~十数億円」の年間運営費がかかるといわれる野球とラグビーだけは手放さず、種目数は少ないが熱心なグループといってよい。

 パナソニックでも特に熱心な同社幹部に話を聞くと、「いずれも成績が良く、ブランド価値の向上に貢献している」と鼻息が荒い。至極まっとうな意見だが、月並みともいえる。

 一方、あるシャープ関係者の意見は興味深い。「うちは70年の大阪万博ですら出展をせず、開発投資費に回したようなわが道を行く会社。メーカーの社会貢献は生活を豊かにする機器を提供し、利益を出して税金を納めることだ。費用対効果が分からない企業スポーツにお金はかけない」。

パナ12年の巨額赤字計上の後は
さすがにバスケ、バドを休部

 近年パナソニックがやめた企業スポーツは、男子バスケ(パナソニックトライアンズ)と“オグシオ”(五輪日本代表選手の小椋久美子、潮田玲子ペア)を輩出したバドミントン。共にパナソニックが7721億円もの巨額最終赤字を計上した12年3月期決算の約半年後に発表された。

 パナソニックは当時、「業績回復に向けたさまざまな経営合理化の取り組みを進めており、企業スポーツの在り方についても多面的に検討してきた」「多くのファンに支持され、常にトップを目指すスポーツに集中していく」と説明。要はお尻に火が付いて初めて、企業スポーツにおける選択と集中を進めたのだ。当時のパナソニックのトップは就任したばかりの津賀一宏社長だ。

 パナソニックは翌13年3月期にも2期連続の巨額最終赤字(7542億円)を計上したが、追加の休部はなかった。男子バスケ、バドミントンの休部は、株主らの批判から他の企業スポーツを守るために「先手を打った」「いけにえとなった」とみることもできる。

 バドミントンは11年に完全子会社化した三洋電機にルーツがあった故に、休部は仕方なかったのかもしれない。ではなぜ松下電器発祥の古豪、男子バスケがやり玉に挙がったのか。社内外でうわさされているのは、当時の社内力学だ。

 休部させるからには販管費削減のメリットを見いだせることが重要だ。「数億~十数億円」と、特に運営費がかかっているのは野球(パナソニック野球部)、男子バレー(パナソニックパンサーズ)、ラグビー(パナソニックワイルドナイツ)、アメリカンフットボール(パナソニックインパルス)、男子バスケとみられる。特にスター軍団のラグビーは選手の約半数がプロ契約のため、15億~20億円ほどかかっているようだ。

 11年に完全子会社化したパナソニック電工(旧松下電工)発祥のアメフトは「旧松下電工の人材輩出部門であり、精神的柱」(パナソニック社員)、三洋電機にルーツを持つラグビーは「休部すれば三洋発祥の企業スポーツがなくなる」(同)、故に選択肢から除外。残る野球には鍛治舎巧専務役員(現岐阜県立岐阜商業高校野球部監督)、男子バレーには森下洋一・元松下電器社長・会長(故人)という有力な後ろ盾がいた。2人は各チームの経験者だ。そこで、消去法的に男子バスケが休部候補に挙がったようだ。

 現在のパナソニックに残る、運営費が特に高い企業スポーツを見ると、「野球=相対的に戦績で見劣り」「男子バレー=バレー自体の人気に往年の勢いなし」「ラグビー=ワールドカップ効果で人気大だが費用も大」「アメフト=他の企業チームはほぼクラブチーム化」と、ツッコミどころが少なくない。だが、企業スポーツ再編に着手するうわさすら聞こえてこない。

 いみじくも松下幸之助氏の孫、正幸氏(07年当時松下電器副会長、ガンバ大阪非常勤取締役)は関西経済連合会の機関誌で、「既に知名度のある企業には知名度向上の必要はないし、企業一家意識が薄れている現代では昔ほど社員の一体感を醸成する必要もなくなった」「社会貢献という理由だけでは企業が特定のスポーツの一チームを支援する根拠にはなり難い」と、前出の企業スポーツの3要素(「企業のブランド価値や知名度の向上」「社員の団結力アップ」「社会貢献」)を否定。さらに、「株主を重視した企業経営が求められる昨今、企業がスポーツを支援しにくい情勢であることは否めない。しかし支援をやめてしまっては日本のスポーツは育たない」と悩める心境を吐露している。

 とどのつまり、費用対効果を測りかねるスポーツ支援にパナソニックがなぜ今でも手厚いのか。その答えは、事業再編を徹底できない「パナソニックの経営の縮図だから」と言わざるを得ない。

Key Visual & Graphic designed by Noriyo Shinoda, Kaoru Kurata