1月28日の政令で、「新型コロナウイルス感染症」が「指定感染症」になり、この法律がいくつかの規定が1年間準用されることになった。

 さらに2月13日の政令で、検疫法の34条の「感染症」に指定されたことで、検疫に引っかかった場合の「隔離」入院が可能になったが、これはあくまで個人に対する措置である。

 日本では地域全体の封鎖による隔離は難しいということだ。

 今回の基本方針でも、テレワークなどの推進や外出自粛を呼びかけるにとどまっているのも、地域封鎖などを強権的にやれるようにはなっていないからだ。

特定国民の入国拒否
屈折したナショナリズムを助長

 入国拒否ということはどこまで根拠があることなのだろうか。

 1月31日の閣議決定で、「出入国管理及び難民認定法」の5条14項に基づいて、「湖北省における滞在歴がある外国人及び同省において発行された同国旅券を所持する外国人」の上陸を拒否する方針が決まった。

 だが、これは、元来「日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」に対する規定であり、知らないうちに感染症に罹患した人に適応するには無理がある。

 仮に、これを適用することは緊急時の法解釈として許容されるとしても、英国船籍のダイヤモンド・プリンセス号を外国人の乗客込みで、日本の港に停泊させたままにして、事実上の隔離空間にすることの法的根拠にはならない。

 だからアメリカのように中国人全般の入国拒否の方針を打ち出している国からも、クルーズ船隔離空間化に批判の声が上がっている。

 感染者の疑いがある自国の旅行者をどう扱ったらいいか、各国ともが現状では確固たる方針を持ち得ていないいため、今のところ大きな国際問題になっていないが、同じようなケースが続くと、中国以外の国との間で、政治的対立が表面化しないとは限らない。

 日本もアメリカのように中国人全てを事実上、入国拒否にしたらいいではないか、政府は中国人旅行客によるインバウンド効果を当てにして中国人に甘いのではないか、安倍政権は実は中国に忖度しているのではないか、などの声が上がっている。

 安倍政権が政治的な思惑や経済的な利害確保で中国に忖度している可能性は否定できないが、それだけの問題ではないだろう。