欧州の嗜好に合わせて
チョコは甘い飲み物へ
16世紀、大航海時代に入ると、チョコレートは転機を迎えます。スペイン人が中米を征服したことで、チョコレートは欧州の文化と融合します。スペインに持ち込まれたカカオに砂糖が加えられ、チョコレートはスペイン人の嗜好に合った甘い飲み物へと変わっていきました。
「舶来物」は高価であったため、口にできるのは貴族や聖職者といった富裕層のみ。チョコレートには疲労回復効果があり長寿になるとされ、「門外不出の薬」として国外へ持ち出すことは禁じられます。そのため100年近くにわたってスペインから出ることはありませんでした。チョコレートの語源については諸説ありますが、スペイン語の「チョコラテ(Chocolate)」の英語読みともいわれています。
しかし約100年後の17世紀、商人や修道士らによってイタリアやフランスへ漏れ伝わり、貴族階級を中心にチョコレートの文化が広がります。1693年、フランスでカカオの取引やチョコレートの販売が自由化。以後、チョコレートの価格が下がり、庶民にも広まることとなりました。
チョコレートに起きた
3大イノベーション
19世紀になると、技術革新の波がチョコレートに三つの大発明をもたらします。一つ目の発明は「ココアプレス」です。1828年、オランダ人のC・J・バンホーテン(後にバンホーテン社を創業)が、カカオ豆から油脂分(ココアバター)を除いた固形分の粉末化に成功します。湯に溶かして飲むこの「ココア」は、新世界から到来した新しい飲み物としてヨーロッパで珍重されました。
二つ目の発明は、かじって食べる「イーティングチョコレート」です。1847年、イギリス人のジョセフ・フライは、カカオ豆と砂糖をすりつぶし、そこへココアバターを加えることで固形化する製法を編み出します。ココアづくりの副産物にすぎなかったココアバターを利用する画期的な手法です。湯に溶かす手間もかからず、携帯できて長期保存が可能。こうした利便性と保存性の良さがイーティングチョコレートを主流へと押し上げます。