賢人100人に聞く!日本の未来#27
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届かないアベノマスクと国民1人当たり10万円の給付金、動かない感染者情報管理システム――政府のお粗末なコロナ禍対応の裏には、個人情報活用体制の大混乱があった。特集『賢人100人に聞く!日本の未来』(全55回)の#27では、情報法が専門で情報法制研究所理事長を務める鈴木正朝・新潟大学教授が日本の個人情報システムの問題点とアフターコロナのあるべき姿を指摘する。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)

国としての体を成していない、
日本の個人情報管理システム

――政府のコロナ禍対応では、各家庭へのマスクや給付金の配布が行われない、cocoa(スマートフォンを使った新型コロナウイルス接触確認アプリ)の開発普及でのトラブル、HER-SYS(病院・自治体向けの新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)が普及・利用されないなど、公的機関の個人情報の取り扱いを巡りさまざまな不具合が起きました。

 パンデミック下においても、個人情報の有効活用ができておらず、命令系統システムも法体系も大混乱している状況です。10万円を各家庭に配ることすら迅速にできないことでそれはよく分かりました。

 個人情報は、それを扱う主体となるコントローラー(管理者)が誰かを明確にする必要があります。誰が情報を取得し、意思決定をし、責任を持って説明責任を果たしていくべきなのか。それすら、今回は明確に示されていません。本来であれば、公衆衛生上の危機に対応して個人情報を使うのですから、厚生労働省がコントローラーになって、直ちに率先して動くべきだった。

 ところがcocoaの開発は、いきなりボランティアから始まりました。さらに民間や各自治体で同様のシステムが独自に立ち上がり、cocoaと整合性も取れていません。これを国防に例えていうと、まず民兵が動き、地方の義勇軍が動いているのに自衛隊が動いていない状態です。情報は国家の神経系で、それを総身に張り巡らすことを考えるのは国の仕事です。情報の管理がないところに適切な指示も出せません。現在の状態は国家の体を成していないと思います。国家が個人情報を管理するというと、すぐにナチス政権など監視国家の不安ばかりが喧伝されますが、現在の日本については無管理国家のリスクの方が大きいです。

――公的機関による個人情報の管理運用体制に大きな問題があると。

 HER-SYSの運用問題の原因でもありますが、東日本大震災のときからいわれているのが「個人情報2000個問題」です。