この数年、自然災害の急増で、毎期赤字を垂れ流していた火災保険。大手損害保険グループ3社は、収支改善を狙って最長契約期間を10年から5年に短縮する方向で足並みを揃えている。しかし、それでも先行きの不透明感は拭えないようだ。(ダイヤモンド編集部 片田江康男)
自動車保険値下げへ
もうけすぎ批判かわす狙い?
損保経営のかじ取りが難しくなっている――。
損害保険大手各社は2021年1月から、自動車保険の保険料を引き下げる方針を固めた。だが、その引き下げ幅は平均して1%弱と小幅にとどまる見通しだ。
18年1月に衝突被害軽減ブレーキなどの割引が導入されたことを除き、自動車保険料は長らく値上げされることがほとんどだった。だが、今年は大雪被害が少なかったのに加え、緊急事態宣言による外出自粛の影響で5月の大型連休のマイカー利用が大きく制限され、事故が大幅に減少した。
この影響は大きく、大手各社の4〜6月期の自動車保険の損害率(アーンドインカードベイシス)は前年比で10ポイント前後も改善し、過去最低となる40%台にまで下がった。故に、事業費を足し合わせた収益性指標のコンバインド・レシオは80%前後と史上最低の水準となり、一部に「もうけすぎではないか」との声が上がっていた。
損保側は、緊急事態宣言の解除後は自動車の利用が増えて事故率が上がってきたため、値下げには慎重な姿勢を崩さなかった。だが、自動車保険に対してもうけすぎだと言われる中、さすがにそうも言っていられなくなったのだろう。それに、水面下では、自然災害の多発、被害の甚大化によって値上げを繰り返してきた火災保険について、業界内で議論が煮詰まりつつあるからだ。