新しいマネジメントの教科書#6Photo:PIXTA

リモートワークにより個々の仕事の効率が上がったため、会社やチームの生産性が向上するケースも見られる。だが、その裏で、以前とは違う環境下で不満やストレスを抱え、離職を考える社員も出てきている。特集『新しいマネジメントの教科書』(全18回)の#6では、一緒に働く者同士が、毎日顔を合わせない時代の理想のマネジメントの形を探っていく。(ダイヤモンド編集部 塙 花梨)

もうすぐ若手が大量離職の危機?
リモートでギクシャクする上司と部下

 なかなか定着しなかったリモートワークが、コロナ禍で一気に加速した。実際に在宅で仕事をしてみると、もちろん不便さはあるものの、毎日満員電車に揺られ定時で働くことの無意味さを、多くの人が実感したことは間違いないだろう。

 今回、数十社に及ぶ企業や専門家への取材で、誰もが口をそろえたのは「コロナが終息しても、リモートワークは残るだろう」という予想だ。つまり、多くの人の実感として、リモートとリアルとが併存した状態は、これからの働き方の“当たり前”になりつつあるのだ。

 しかし、経営コンサルタントの藤田耕司氏は「夏ごろから、部下との関係性に関するリモートワーク絡みの相談が止まらなくなった」と話す。リモートワークが強制されて3カ月ほどが経過し、途端に「上司と部下の関係がぎくしゃくし始めた」というのだ。

 今年の春、まだ緊急事態宣言が出たばかりのときは、一人一人の作業効率が上がり、会社やチームの生産性が向上したと、喜びの声も多かった。それなのに、リモートワークに関する相談件数はその後増加傾向にある。

 これは一体、どういうことなのか。

リモートでは「言葉以外の情報」が超重要!
部下との心理的距離は、“雑談”で近づけろ

 人間は、対面でのコミュニケーションだと言語以外の情報を重視する性質がある。そのため、テキストだけだと言語以外の要素(表情、テンションなど)が伝わらず、素っ気なく受け取られやすい。

 そして、素っ気なさを感じた部下は「怒っているのかな?早く終わらせなきゃ」と上司の感情を勘繰ってしまい、不安感からいつも以上に集中して仕事をしてしまう。結果として、一時的に生産性が上がったように見えるケースがあるのだ。

 つまり、生産性向上をぬか喜びする間に、部下の不満は膨らみ、数カ月後に“離職”という形で一気に爆発してしまう危険性をはらんでいるというわけである。

 藤田氏は、「おそらく年末までに、多くの企業で離職が増えるのではないか」と予測を立てている。では、この事態を防ぐために、リモート環境下で、部下へのマネジメントをどのように変えればよいのだろうか。

次ページからは、実際にリモート環境下で起こる上司と部下の課題と、それを解決するための具体的な方法を紹介する。