「私はあなたという存在を大切にしていますよ」というメッセージが相手の心に届くこと、つまり「相手の承認欲求を満たすこと」こそが、「人間関係を円滑にするキーワード」といえるのです。
マナーは所作ではなく、「相手を気づかう心」が大切である
私は「お客様の笑顔」が見たくて、CAになりました。すると、その思いは次第に膨みはじめ、「飛行機を利用するお客様だけでなく、もっとたくさんの人の笑顔が見たい」と思うようになりました。
「笑顔」は、人の心を幸せで満たします。私がCAをやめて「マナー講師」になったのは、「もっともっと、たくさんの人を笑顔にしたいから」です。「人付き合いのマナー」こそが人間関係を変え、人の心を「あたたかく」し、自分の人生をも変えていくのです。
私がマナー研修を行うとき、はじめに、みなさんにお伝えすることがあります。それは、「マナーは所作ではなく、『相手を気づかう心』が大切である」ということです。所作を覚えることはとても大事ですが、「相手を気づかう心」が
伴っていなければ、それは、「見せかけ」にすぎません。
どうして「相手を気づかう心」が大事なのでしょう? それは、人間はだれでも、「人に心から認められたい」「大事にされたい」「わかってほしい」と思う心=「承認欲求」があるからです。
先ほども申し上げたように「承認欲求を満たすこと」こそが、人間関係を良好にするキーワードです。では、「承認欲求を満たすこと」とは、具体的にどんなことでしょうか?
たとえば、知り合いがひとりもいない「パーティー会場」で、ひとりで心細く思っていたとき、「名刺交換をさせていただけますか?」と笑顔で声をかけられたら、どう思いますか? だれかに気づいてもらえたことを「嬉しい」と思うはずです。
たとえば、自分が残業をしているときに、同じフロアの同僚が「カフェラテの差し入れを買ってきてくれた」としたら、その「気づかい」が嬉しくなりませんか? こうしたささいなことでも「相手の承認欲求を満たすこと」になるのです。
承認欲求があるのは、大人だけではありません。私たちは、生後すぐに、「生存に対する本能」として承認欲求を持つようになります。
私の姪も、0歳のときに、すでに承認欲求がありました。弟と義妹が食事をする際、彼女をベビーベッドに寝かしたままにすると、姪は急に泣き出すのです。けれど、輪の中に入れてあげると、すぐに泣きやみます。
それは、人はたとえ0歳でも、ひとりになることに恐れを感じるものだからです。
名刺交換をしてきてくれる人やカフェラテの差し入れが嬉しいのも、姪が泣きやんだのも、それから、私が松田聖子さんやジェームス・ブラウンさんのことを好きになったのも、「人としての承認欲求が満たされたから」です。承認欲求が満たされて、「あたたかい気持ち」になったからです。