混沌極まる世界において、日本はいかなる対外政策を歩むべきなのか。特集『総予測2021』(全79回)の#59では、菅政権の外交ブレーンとして内閣官房参与を務める宮家邦彦氏(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)に、今後の外交・安保政策の注目点などについて聞いた。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)
中東までのシーレーン確保が
日本の極めて重要な国益
――米政権交代も控える中、2021年の日本の外交・安全保障政策の焦点をどう捉えていますか。
日本の国益において経済的にも政治的にも極めて重要なものの一つは、中東までのシーレーン(海上交通路)の確保です。昔はこれを日米安全保障条約だけで確保しようと努力し、それがASEAN(東南アジア諸国連合)を巻き込むような形となり、中国の台頭に伴ってオーストラリアやインドも含む多国間の対話の場が開かれてきました。
恐らくこのような外交政策以外、日本の国益を最大化できるものはないと思います。安倍政権が進めてきたそうした政策を、当分続けるのが日本の国益だと考えるからこそ、菅政権はこれを継承する形で動き始めました。
よって日本は、同盟国の米国と引き続き共通の利益を維持しつつ、より似たような考えを持つ国々を増やし、東アジアや西太平洋において、同盟ではなくてもそういった国々との連携を深めていくだろうと思います。
――エスパー前米国防長官が20年9月、日本を含む同盟国に「国防費をGDP比で少なくとも2%に増やしてほしい」と表明しました。バイデン政権下でも同様の要求が浮上する可能性はありますか。