公の場から姿を消したアリババ創業者
グローバルIT企業も監視下に

 アジア最大のIT企業グループとなったアリババの創設者ジャック・マー氏がここ数カ月、公の場から姿を消している。

 それに先立ち、昨年10月に上海で行われた金融サミットでは、ジャック・マー氏は中国には金融システムが存在せず市場の改革が急務であるとして中国の金融当局や国有銀行を激しく非難した。

 その後、11月に香港・上海市場で予定されていたアリババ・グループの金融会社であるアント・フィナンシャルの調達額350億ドル(3兆6000億円)に上るといわれた史上最大規模のIPO(新規株式公開)が予定の2日前に突如、延期された。

 これら一連の出来事から読み取れるのは、アリババに代表される巨大IT関連企業が中国の発展に大きく貢献していることは認識しつつも、共産党のコントロールが利かなくなることへの中国当局の強い警戒心だ。

 昨年末の民主派議員の大量逮捕など、香港で起こっていることも同じような文脈で理解できる。

 昨年6月に香港国家安全維持法(国安法)が導入されて以降、「香港の中国化」が急速に進んでいる。中国の思惑は今年9月に予定される立法会選挙までに民主派を事実上、排除することだろう。

 国安法に基づき多数の民主派を逮捕拘束するのもその一環であり、中国政府を批判するメディアに対しても厳しいコントロールを行っている。

「一国二制度」に沿った香港の自治と自由な資本主義は形骸化した。中国にとって香港は、中継貿易や投資基地として、或いは人民元の国際化を図る上で大きなメリットをもたらしてきたが、国内でも上海や深センなどの金融拠点は育ちつつあり香港の重要性は下がった。

 一方で香港の民主化運動が中国本土へ波及する可能性がある。中国の指導部はそのことを危惧し、経済的にはマイナスでも政治的には共産党のコントロール下に置くことが重要と考えたのだろう。

「中国排除」に備え
民営企業にも党の指導強化

 米中対立も直接のきっかけは膨大な貿易不均衡を中心とした経済摩擦だったが、対立の本質は、貿易の量的バランスの問題から経済システムの問題にシフトした。

 米国をはじめとする自由主義諸国から見れば、中国の共産党統治の下での「国家資本主義」は、補助金などによる国営企業優遇、さらには進出外国企業に対する技術移転の強要など、市場メカニズムを害する構造的問題となった。

 それだけではなくファーウェイ排除にも見られるように、中国の情報通信機器を通じて情報が中国政府に筒抜けになってしまうことを危惧し、経済安全保障の観点からも中国排除の動きが進んできた。