組織の慢性疾患に向き合うときこそ
「他者の視点を借りる」が大事になってくる

──『組織が変わる』の本のカバー右ソデ(表2)には、次の「7つの効能」が書かれています。

1.自分も相手も見えている風景が変わる
2.自分でしょいこんでいた荷物をおろす方法がわかる
3.人の力を借りられるようになる
4.ひとりで悩まなくなる
5.4人1組の「2 on 2」で言語化できないモヤモヤの正体が現れる
6.上司と部下が協力し合える
7.組織が変わる

 この中で、「特にこの効能は高い」と感じるのはどれですか?

宇田川:あえて一つ挙げるなら、「3.人の力を借りられるようになる」でしょうね。

 私の専門の企業のイノベーション分野では「オープン・イノベーション」がよく議論になります。
 最近では、大企業がベンチャー企業と協業する意味合いも多いのですが、本来は「他の人の視点を借りる」のがポイントであったように思います。
 他者の視点を通じて、自分たちを捉え直すことで、意外な力、意外な資源が発見されることがあるからです。

 外部の視点を借りて、自社の資源を捉え直す。

 今の時代には、特に必要なことではないでしょうか。

三流リーダーは組織【を】変える、一流リーダーは組織【が】変わる

──以前、宇田川さんは、「問題を解決する」ことと「何が問題かを見つけ出す」ことの違いを指摘して、「2 on 2」では後者をやっていると言われました。

「何が問題かを見つけ出す」うえで、「他者の視点を借りる」ことがより必要になるのは、どうしてですか?

宇田川:それはものすごく大事な点です。

 自分は確かに問題を感じているが、「何が問題かよくわからない」「どうしていいかわからない」状況のとき、自分のナラティヴ(生きている物語)はどんどん煮詰まっていきます。

 どうしていいかわからない状況ですから、どんどん煮詰まっていくのは当然ですよね。

 そのつらい状況を受け止め続けるのが困難ですから、既存の解決策に向かいたくなってしまう。それは、問題を捉える構図を解決策が想定しているものに押し込めるという意味でもあるのです。
 しかし、その問題の捉え方には、どうにも手触りがありません。
 でも、煮詰まっている状況においては、なかなか手触りのある問題の捉え方に至ることは難しいですよね。

 そのときに自分たち「他者の視点」を借りることができれば、問題の捉え方に変化が生まれます。

 素朴な疑問を投げかけてもらったり、問題を反転させてみたり、「それってこういうことですか?」と投げかけられたり、そんなことをしていく。

 他者の視点を借りることで、「自分にもこういった苦しさがあるな」と感じたり、「そう考えればいいのか」と気づくこともあります。

「他者の視点」を借りることで、自分が抱えている「苦しさの正体」がわかってくるのです。

 そうすると、もっと何に困っているのか、手触りのあるものにしていくことができますよね。

 自分もそこにどう関わっているのかも、見えてくることもあるかもしれません。

 そうしたら、自分たちなりに、モヤモヤしていた問題に対して、少し手立てを講じることができるようになるのではないでしょうか。

 組織の慢性疾患は、そういった「正体がはっきりしない顔の見えない問題」であり、「2 on 2」などを通じて「他者の視点を借りること」がより大事だと感じています。

【「だから、この本。」大好評連載】

<第1回> あなたの会社を蝕む6つの「慢性疾患」と「依存症」の知られざる関係
<第2回>【チームの雰囲気をもっと悪くするには?】という“反転の問い”がチームの雰囲気をよくする理由
<第3回> イキイキ・やりがいの対話から変革とイノベーションの対話へ!シビアな時代に生き残る「対話」の力とは?
<第4回> 小さな事件を重大事故にしないできるリーダーの新しい習慣【2 on 2】の対話法

<第5回> 三流リーダーは組織【を】変える、一流リーダーは組織【が】変わる

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