街にあふれる小型の風車
人工知能(AI)が電力を管理

 脱炭素への取り組みによって、わが国の社会と経済は大きなパラダイムシフトに遭遇することになるだろう。そのインパクトをイメージするため、わが国がカーボンニュートラルを達成した場合の社会と経済の様子を頭の中に描いてみたい。

 エネルギー分野では、化石燃料の消費がなくなる。電力供給のために、街の至るところに小型の風車が設置され、建物の屋上や屋根には太陽光パネルが敷き詰められる。各建物には消費電力量に応じた蓄電池が設置され、バッテリーシステムは人工知能(AI)に管理される。状況に応じてAIが流通市場で電力を売買し、自律、循環かつ持続的な電力システムが運営される。再生可能エネルギーを用いた電力システムを購入、あるいはサブスクライブする(継続課金でサービスやモノを使う)ことや、家計が企業などと「排出権取引」を行うことも当たり前になる可能性がある。

 産業分野では、すべての自動車が電気自動車(EV)あるいは水素を用いた燃料電池自動車(FCV)に変わるだろう。自動車には自動運転・飛行など先端技術が搭載され、「移動する居住空間」として利用される。自動車と家電などの産業の境目は曖昧になり、設計・開発と生産の分離が加速し、わが国で用いられる自動車の多くが、人件費の安い海外の工場でユニット組み立て型の方式によって生産される可能性は高まる。自動車のボディをはじめ衣類や食器、建材などさまざまな資材や製品が、木材を原料とする「セルロースナノファイバー」から生産されるケースも増えるはずだ。

 そうした状況下、わが国企業の多くが水素の生成・運搬・貯蔵、および二酸化炭素の回収・貯蔵・再利用、あるいは脱炭素につながる素材の開発製造などの分野で強みを発揮している可能性がある。以上は、わが国政府が脱炭素化への取り組みによって目指す、社会と経済のあり方の一つのイメージだ。