中国国旗Photo:PIXTA

巨大テック企業や教育産業への規制を強化したことで中国への投資継続を疑問視する声が上がっている。しかし、テック企業で進む寡占や独占、経済格差が教育格差を通じて固定化する構造などは、先進国でも懸念される現象だ。その是正に切り込む中国の方が長期的成長を実現する公算が大きいかもしれない。(BNPパリバ証券チーフエコノミスト 河野龍太郎)

規制強化する中国への
投資を考え直すべきか

 中国が巨大テック企業への規制を強化したことで、対中投資の拡大を再開していた先進国の機関投資家は困惑しているだろう。

 米中対立が続いても、バイデン政権下で抑制される経済取引は、軍事技術や人権が絡むものに限られ、新冷戦やデカップリングには至らないため、中国への投資を手控えるのは得策ではない、と考えていたからだ。

 巨大テック企業に規制を加え、教育産業に介入する権威主義的資本主義の中国に積極的な投資を行うのは、考え直すべきか。

 資本主義は進化を続けている。社会保障制度が導入される前の第一次世界大戦以前は、英国に代表される古典的資本主義の時代だった。そこでは、資本家階級と労働者階級に明確に分かれ、生産に占める資本所得の水準は極めて高く、資本は世襲の富裕層に偏在していた。

 第二次世界大戦で高率の法人税率や所得税率が導入され、それを原資に社会保障制度が整えられたため、戦後は米国を中心に社会民主主義的な資本主義体制に移行し、労働分配率は1970年代まで上昇傾向が続いた。