ANAホールディングスや日本航空(JAL)のコロナ危機対応は、リーマンショックやJAL破綻時に現場を率いた者たちの経験が生きた。次に彼らに問われるのは、構造改革の実行力。2022年、ANAグループは人員抑制を含む構造改革を断行するだろう。特集『総予測2022』の本稿では、大赤字に苦しむ航空会社の次なるシナリオに迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
「JAL破綻」経験世代が
コロナ危機に対応した
ANAホールディングス(以下、ANA)の片野坂真哉社長は就任7年目。在任が長期化した背景には、非常事態の勃発がある。「社長交代のタイミング」と目されていた中で、コロナ禍が航空業界を襲った。
コロナ禍において、ANAも日本航空(JAL)も上層部のメンツに恵まれたのは不幸中の幸いだった。リーマンショックやJAL破綻時に現場を率いた者たちが中枢に残っていた。彼らが経験で培った判断力やノウハウでコロナ危機に対応し、早期に資金繰りのコントロールやコスト削減などに踏み切れたのだ。
ただこの世代は、ANAはJAL、JALはANAへの敵対心が強い。生き残りを懸けて政官財を巻き込む闘いを繰り広げてきたことが、脳裏にこびりついている。
だから合理化が図れるだろう、2社統合論への拒否反応が強い。世界の航空市場で再編が繰り広げられているにもかかわらずだ。
とはいえ、目下の危機がさらに深刻化し、国や銀行団などが介入することがあれば、そのときは統合も選択肢に入ってこよう。
統合を回避して自力で生き残るためには、この世代が構造改革でも実行力を発揮できるかどうかが鍵となる。ANAの片野坂社長にとって構造改革は、就任当初から果たしたかったものでもある。
従って2022年、ANAグループは人員抑制を含む構造改革として、リストラを断行するだろう。
そのシナリオはどんなものか。どのくらい人員を減らし、雇用・人事戦略はどんなものになるのか。