金融DX大戦#6Photo by Yoshihisa Wada

みずほフィナンシャルグループで今年4月から、デジタルイノベーション担当と財務・主計グループ長を兼務するのが梅宮真執行役副社長だ。デジタルトランスフォーメーション(DX)のキーマンが、水面下で進めるプラットフォーマー構想を明らかにした。構想の基盤は、「苦戦」を認めるみずほのスマホ決済サービス、Jコインペイにある。特集『金融DX大戦』(全22回)の#6では、その新構想の詳細を明らかにする。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

ソフトバンク、グーグル…外部提携でDX加速
最大の課題はみずほ内部の「バラバラ感」?

――みずほフィナンシャルグループ(FG)のDX戦略について教えてください。

 例えばLINEさん、ソフトバンクさん、あるいは最近でいえばグーグルさんとの提携戦略ですよね。みずほのネットワークでは、これまでなかなかリーチできなかったお客さんに向けて、いろいろなビジネスに取り組んでいます。

 一方で(みずほの)中のDXって本当にできているのか、お客さんのニーズにちゃんと向き合えていますかというと、実はちょっとバラバラ感が強かった。私はCFO(最高財務責任者)という立場で戦略を含めて幅広く全体を見ていたので、それらをつなぎ合わせていくことが必要かなと思っています。

――CDIO(チーフ・デジタル・イノベーション・オフィサー)とCFOを兼務することで、経営資源をどこにどう配分していくかを俯瞰できる。

 そうですね。新しいことをやるのは非常にチャレンジングで面白いんですけれど、ややもするとやらない理由を考えちゃうこともある。例えば「予算がないからやれない」とか、そういう声が上がったりすると、CFOを兼務していますから「誰がそんなことを言っているんだ?」という話ができるわけです。

 ただ資源配分以前に、みずほとして本気で社員の仕事のやり方を変えていく。お客さんとの向き合い方を変えていくという観点でいえば、みずほの強みを完全に生かし切れていない。バラバラの動きを個別にやっちゃっていることが、あまりにももったいないなという感じなんですね。

梅宮氏が冒頭から繰り返し口にしたのが、「バラバラ感」だ。昨年、システム障害を繰り返したみずほ銀行とみずほFGに対し、金融庁は「IT現場の実態軽視」や「顧客影響に対する感度の欠如、営業現場の実態軽視」といった問題の真因を指摘した。

それらの背景には、組織がたこつぼ化し、社員が「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない姿勢」(金融庁)で仕事をしていたことがある。まさにみずほ内部は「バラバラ」だったのだ。

そうした組織内の壁を壊し、社員の意識変革を促す有効な手段がDXだ。梅宮氏はDXを最大限活用し、みずほが抱える課題の解決だけでなく、ビジネス面で「大きな可能性がある」という新たなプラットフォーマー構想を水面下で進めていると明らかにした。