FRB(米連邦準備制度理事会)をはじめとする主要国の利上げ競争はまだ続きそうだ。本来、金利上昇が売り材料となる金相場だが、足元の動きは底堅くなりつつある。その理由を探る。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)
主要国の利上げ継続で
7月の金相場は軟調に推移
金相場は、3月上旬に1トロイオンス当たり2069ドルと史上最高値に迫った後、下落傾向で推移している。
8月前半には1800ドル台まで持ち直す場面もあったが、9月28日には1613ドルと2020年4月以来の安値を付けた。10月下旬にもその安値に近づく場面があったが、その後、やや持ち直して1600ドル台後半で推移している。
7月に入ってからの金相場は軟調だった。主要国での利上げ継続などを背景に金への投資意欲が減退したのが大きく影響した。
また、ロシアから欧州への天然ガス供給に対する懸念が強まったこともあって相対的にユーロ圏経済が弱く、米国経済が強いとみなされて、為替市場でユーロ安・ドル高が進んだことや、インドが金の輸入税を引き上げて需要鈍化観測につながったことも売り材料だった。
中旬には、6月の米CPI(消費者物価指数)の上振れを受けて、7月26~27日のFOMC(米連邦公開市場委員会)で1%の利上げが行われるとの観測が強まり、ドル高が進む中、金は一時1700ドルを下回った。
その後、FRB(米連邦準備制度理事会)のウォラー理事やセントルイス連銀のブラード総裁が7月のFOMCでは0.75%の利上げを支持する考えを示したことなどから過度な利上げ観測は一服したものの、金は安値圏で推移し、21日には1680ドルまで下落した。
下旬には、FOMCで市場予想通りに0.75%の利上げが決定されたが、その後のパウエルFRB議長の会見がややハト派的と受け止められたことなどから、金相場はやや反発した。
8月以降は、いったん高値を付けた後、下落基調に転じるのだが、10月下旬以降持ち直し底堅い動きを見せつつある。その理由を次ページから探っていく。