子どもの健康より「安定財源確保」
現在、厚労省では、令和6年から開始される次期国民健康づくり運動プランの策定が進んでいる。その議論の中で、斎藤氏が会長を務める日本禁煙推進医師歯科医師連盟は、喫煙率を先進諸外国の目標に近づく「5%」にすべきだと提言している。ちなみに、現在の日本の喫煙率は16.7%(2019年)だ
世界では、たばこは健康を害するものという位置付けなので、厚生労働省のような健康行政の役所が管轄をすることが多い。しかし、日本では「たばこ」は戦争をしていた時の財源という位置付けを今も引きずっているせいで、今も財務省が管轄している。
それどころか、「たばこ事業法」という法律に基づいて、たばこ産業の「健全な発展」を国が後押しをしているという珍しい国だ。
だから、受動喫煙で健康を損なう子どもがいくら増えても、「安定財源確保」のため国は「たばこ問題」をスルーする。このあたりの日本特有の人権感覚は、「お国のためには、子どもの命など喜んで捧げよ」と叫んでいた戦時中とそれほど変わっていない。
果たして、子ども家庭庁の発足で、「たばこがいやだ」「煙が気持ち悪い」という日本の子どもたちは、諸外国の子どものように救いの手が差し伸べられるのか。それとも、これまで通りに、「親の付属物」という扱いで、望まない煙を吸わされ続けるのか。注目したい。
(ノンフィクションライター 窪田順生)