総予測2023#42Photo by Masato Kato

赤字ローカル線の存廃問題について、これまで地方の自治体は鉄道会社との協議を拒んできた。しかし東日本旅客鉄道(JR東日本)の深澤祐二社長は、2023年に「協議会を発足させて話し合い、実証事業を行う」と宣言してみせた。特集『総予測2023』の本稿では、鉄道最大手であるJR東日本のトップが本業の鉄道事業が抱える重い問題に踏む込む覚悟を語った。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

「週刊ダイヤモンド」2022年12月24日・31日合併号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

テーブルに着いていただけない
自治体が多かった

――JRが抱える赤字ローカル線の存廃問題に、2023年はどこまで踏み込みますか。1キロメートル当たりの1日の平均利用者数が2000人未満の線区の収支を22年に初めて公表し、どこも赤字でした。

 公表したのは、一定のデータで位置付けを示し、共通認識を持つためです。

――旧国鉄時代は4000人未満でバスへの転換などが検討されました。

 数字上で該当する全てに、いっぺんに何かやっていくつもりはありません。地域ごと線区ごとに特徴があり、特性が異なりますから。

――地方の自治体は話し合いの場に着いたら負けと考え、協議を拒んでいます。それを切り崩すのが、国の検討会が22年に出した提言。1000人未満の線区を目安に国が自治体や鉄道会社を仲介して協議会を設置し、3年以内に結論を出すことを求めました。

 今までなかなかテーブルに着いていただけない自治体が多かったのは、支援がないと先に進めないということがありました。提言で「国が支援するから自治体も責任を持ってください」というスタンスが示されたのはありがたい。