貧国ニッポン 「弱い円」の呪縛 #1Photo:Takashi Aoyama/gettyimages,Vladimirovic/gettyimages

東京電力ホールディングス(HD)の主力子会社で小売り事業を担う東京電力エナジーパートナー(EP)が2022年度に再び債務超過に陥る見通しであることが、ダイヤモンド編集部の取材で分かった。東電HDは数千億円を増資する方向で主力行と調整に入った。特集『貧国ニッポン 「弱い円」の呪縛』(全13回)の#1では、債務超過を繰り返す東電EPの手の施しようのない惨状を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

東電HDの2000億円増資が
半年も持たずに溶ける

 東京電力ホールディングス(HD)の主力子会社で小売り事業を担う東京電力エナジーパートナー(EP)が2022年度に再び債務超過に陥る見通しとなった。

 業界最大手の東電HDは23年3月期中間決算で、1433億円の最終赤字に沈んだ。主因となったのが、東電HDの子会社で電力小売り事業を担う東京電力EPの業績不振だ。

 発電燃料であるLNG(液化天然ガス)や石炭の価格高騰に加え、22年度に急加速した円安が直撃。東電EPは同年3月期第1四半期決算で908億円もの経常赤字を計上し、67億円の債務超過に陥った。

 東電EPの債務超過は、グループ分社化によって同社が設立された15年4月以降で初。11年の東日本大震災による東電福島第一原子力発電所の事故を受けて、経営再建を進めてきた東電グループにとっては最悪の事態となった。

 東電EPの財務基盤を立て直すべく、東電HDは22年8月末、東電EPへ2000億円増資する方針を決定。10月末に払い込みを終え、東電EPの債務超過は解消したばかりだった。

 ところが、である。東電HDによる資本注入からわずか半年もたたずに2000億円を溶かし、東電EPは再び債務超過に転落する見通しだ。

 いったい、どういうことなのか。

 実は、東電EPをわずか半年で再び債務超過に陥れる原因をつくったのはある人物である。次ページでは、その人物の正体と共に、東電HDの復活を妨げる「病根」について明らかにする。

 苦境に陥った東電HDを巡っては、さらなる資産売却の圧力も高まっている。業界でまことしやかにささやかれる東電EPそのものの売却よりも、東電HDが超特急でキャッシュを確保できる「最終手段」の存在も明らかにする。