日野自は、01年にトヨタが株式の過半数を取得(50.1%)し子会社化して以来、トヨタが社長を送り込んできた。国内普通トラック(大・中型)市場では、49年連続トップシェア(21年まで)を獲得しており、トヨタとしても軽自動車のダイハツ工業と並んで、商用車事業の重要なグループ企業と位置付けている。それゆえ、トヨタからは社長だけでなく幹部人材もかなり送り込んで連携を強めてきた。

 こうした関係がある中、エンジン不正問題がトヨタが子会社化した2000年代初めから続いてきたというのは、章男トヨタ社長にとっても頭が痛いことだろう。

 トヨタは当初「日野は子会社だが、上場企業として独立しているため、まずは同社が責任をもって原因を解明し再発防止に向けて万全に取り組むべきだ」とのコメントを開示していた。だが、昨年8月に約20年にわたる長期不正が公表されたことで、直ちに商用車事業会社コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジーズ(CJPT)から日野自の除名を決定した。

 CJPTは、トヨタ・いすゞ自動車・ダイハツ・スズキと日野自が参画している商用車CASE技術を集結させる合同出資企業だ。あえて“除名”という厳しい措置を講じたのはトヨタトップの怒りの表れと受け止められた。現に章男社長は日野自の不正に対して「共有する思いや目指す道とは相いれない」とコメントしたほどである。

 しかし、章男社長は昨年12月の「タイトヨタ設立60周年記念式典」で、次期新興国戦略車「IMV 0(アイエムブイ ゼロ)」と「ハイラックス Revo BEV」コンセプトカーをタイ現地で初公開し、タイのコングロマリット大手であるチャロン・ポカパン(CP)とカーボンニュートラル実現へ提携することを発表したが、その提携にCJPTが連携し、除名中の日野自も加わることを明言したのだ。