トヨタで内山田会長の下HEVプリウス開発を手掛け、トヨタの社内カンパニー「CV(商用車)カンパニー」プレジデントを経て日野自入りしたばかりの小木曽氏に、21年6月社長を譲り会長となったものの、残念ながら翌年の3月にエンジン不正問題で小木曽社長とともに記者会見で陳謝、6月の株主総会で会長退任となった。トヨタも下会長・小木曽社長のコンビ経営に期待していたが、その後は小木曽社長が孤軍奮闘の形で再三にわたる謝罪・社内改革の会見を行ってきたのだ。

 すでに経営責任ということでは、小木曽社長の月額報酬半減6カ月、日野自のプロパー取締役3人と開発担当の専務役員の退任のほか、不正が続いていた間の歴代社長などへの報酬の一部返納を求めることを決めており、一定の“みそぎ”を済ませている。2月からの新経営執行体制は「一緒に考え、一緒に走る、みんなでクルマを作る」体制で進むことになる。

 だが、2月からの小木曽社長・CEO新体制で、どれだけ自己再生に向かうことができるのだろうか。取締役・経営陣容は前述した通り、小木曽社長に近健太取締役のほか、社外取締役ら計5人体制だ。近取締役はトヨタの副社長であり、いわば豊田章男社長の意思と連動する“代理人”である。直接経営をかじ取りできる人材は少ない。

 日野自の業績は国内での出荷停止により、22年4月以降国内市場での普通トラックの販売シェアのトップはいすゞに取って代わられている。通年でも、21年までの普通トラック49年間連続トップシェアは途切れたものとみられる。

 海外向けはアジアを中心に堅調な販売を示しているが、それでも22年度業績は前期の847億円の最終赤字に対し、営業利益は60億円と前期比82%減を見込み、純利益は未定という状態だ。最終的に顧客への補償のため特別損失の計上を迫られ、前期以上の赤字は避けられないものとみられる。

 昨年12月には、日野本社に隣接する日野工場敷地の3分の1にあたる土地の売却も発表しており、財務基盤の強化を図っている。すでに茨城県古河市に日野本社工場からの生産拠点移転を進めており、これはその一環でもある。