このChatGPTは、質問を入力すればそれらしい答えを返してくれます。それだけでなく、作曲をお願いすれば音楽を作ってくれますし、デザインを依頼すればそれらしいイラストを瞬時に生成してくれます。一般に公開されたのは2022年の11月なのですが、あっという間にユーザー数を増やし、利用者はその性能に一様に驚いています。
マイクロソフトのライバルであるグーグルはこのChatGPTを緊急かつ重大な事業上の脅威とみなし、多額の投資をして追随しています。それで、最近発表されたニュースが二つあります。
一つは、マイクロソフトが検索エンジンのBingにChatGPTを搭載するというニュースであり、もう一つが、それに対抗してグーグルがバードという対話可能な人工知能を数週間以内に一般公開すると表明したことです。
これらのニュースが意味することは、いよいよ一般のビジネスパーソンがAIを仕事に活用できる時代に入ったということです。ChatGPTについては、おそらく今後の予測としてはマイクロソフトオフィスに機能として組み込まれるようになるでしょう。
そうなるとこんなことができるようになります。あなたがパソコンで開いたWordに向かって、「本部に報告する先月の営業レポートをA4サイズ2枚で作成して」と入力するだけで、Wordは過去の営業報告書を学習したうえでイントラネットからそれらしい社内データを集め、インターネットからそれらしい外部環境の情報を入手して、それらしい報告書を作ってくれるようになります。
たとえば、
「欧州部門では1月はインフレによる経済停滞が懸念されていました。ところが折からの暖冬の影響で液化LNGガスの価格が大幅に下がり、高騰していた電気料金は値下げに転じました。このことで欧州主要国の消費者心理に回復の兆候がみられます。結果、当社の売り上げはドイツでは計画比2.3%プラスとなり……」
みたいな完成度の高い報告書の「下書き」が瞬時に生成されます。
これは私のような経済評論家にとって朗報で、同じようにWord画面に、「スシローのSNSで起きているテロ行為に関して、2500文字程度で記事を書いて」と入力すれば、ちょうど今私がやっている「パソコンに向かって数時間頭をひねりながら文章を書くような仕事」もずっと楽になるでしょう。
この時、私が賢かったらすぐに気づくはずなのですが、これ、私の仕事がなくなりますよね。
実はダイヤモンド・オンライン編集部の社員が、「鈴木貴博さんの過去の記事のテイストで、スシローのSNSテロについて2500文字で記事を書いて」と入力すれば、もう私に寄稿を依頼しなくても大丈夫になるからです。