銀行・信金・信組 最後の審判 #5Photo:PIXTA

課題あるところにコンサルティングのビジネスチャンスあり、だ。その意味で課題の多い金融業界はコンサル会社の稼ぎ口といえる。金融コンサルといえばアクセンチュアの牙城だが、デロイトトーマツやPwCら会計系コンサルも近年、地方銀行に対するコンサル業務に注力し始めた。金融業界のコンサル勢力図は塗り替わるのか。特集『銀行・信金・信組 最後の審判』(全16回)の#5は、その攻防戦の最前線に迫る。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

「金払いがいい」地銀に照準
アクセンチュア“1強”に異変

 事業環境の厳しさが増す地方銀行だが、近年、劇的な改善が表れている領域もある。経費削減だ。地銀の営業経費総額は2017年度から4年間で約2400億円減少している。減少分の8割強を占めるのが人件費だ。

 業務粗利益に対する経費の割合(OHR)を改善すれば、日本銀行に預ける当座預金に年0.1%の金利が上乗せされる優遇制度があるためで、そもそも人材流出が止まらない地銀は、さらに新規採用の抑制や役職員の削減で人件費カットを進め、当面の収益を確保しているわけだ。

 ただし、それはあくまで「当面」の延命措置にすぎない。足元の決算は、外国債券だけでなく国内債の含み損も拡大し、地域経済の先行きも不透明だ。日本資産運用基盤グループ投資運用ソリューション部の石田淳部長は「含み損の拡大に伴いリスクテーク力が低下し、投融資の機会が失われる。不良債権が少しずつ増加しているのも気掛かりだ」と懸念する。

 いくら人材や店舗を削減しても、その先の成長戦略が描けなければ持続可能性はない。それが今、多くの地銀が抱える悩みである。

 そこにコンサルティングの需要が生まれる。コンサル会社からすれば地銀は「経費削減で手元資金は潤沢。小さな地銀でも驚くほど金払いがいい」(独立系コンサル)上客なのだ。

 地銀とコンサルの協業プロジェクトとしてよく知られるのが、ふくおかフィナンシャルグループ(FFG)のデジタルバンク「みんなの銀行」だろう。コンサル大手のアクセンチュアが戦略からシステム構築まで一気通貫で担い、FFGが21年に開業した日本初のデジタルバンクだ。

 地銀が成長戦略を語る上で、デジタルトランスフォーメーション(DX)は必ずと言っていいほど盛り込まれるストーリーである。アクセンチュアは15年にデジタル領域のコンサル強化に着手し、デジタル人材を大量に抱える。DX支援の実績やノウハウでいえば“1強”の存在だ。

 だが近年、地銀業界に商機ありとみた他のコンサル会社も地銀支援に動き始めた。例えばデロイト トーマツ コンサルティング(DTC)やPwCコンサルティングだ。現状では、四大監査法人のコンサルを全て足してもアクセンチュアの規模に及ばないが、後発の彼らに勝機はあるのか。

 DTCで地銀コンサルを率いるキーマンが、自らの戦略と勝算を明かした。次ページでその詳細を明らかにする。