成人は薬物治療の必要性が高い
「ビバンセ」は成人に適応拡大を

 ガイドラインでは「ADHDの治療・支援は環境調整に始まる多様な心理社会的治療から開始すべきであり、薬物療法ありきの治療姿勢を推奨しない」とされていますが、小児においても投薬は重要な治療法であり、成人であれば、なおさら薬物治療の必要性は高いものです。

岩波 明・昭和大学医学部精神医学講座主任教授、同大学烏山病院院長いわなみ・あきら/精神科医、医学博士。1959年神奈川県生まれ。東京大学医学部卒業後、同大学助教授、埼玉医科大学准教授などを経て現職。著書に『発達障害』(文藝春秋)『精神医療の現実』(KADOKAWA)。 Photo by Seiko Nomura

「環境調整」といっても、成人の場合、職場や家庭など周囲の環境を変えることは極めて難しいのが現実ですから、薬に抵抗感が強くない限り、多くの場合、成人のADHDには薬物治療をお勧めしています。

 個人的には、本邦で保険適用されているADHD治療薬4剤のうち、6歳以上18歳未満への処方に限られている「ビバンセ」(一般名:リスデキサンフェタミンメシル酸塩)の適応を成人に拡大することが必要であると考えています。

 覚醒剤に似た構造を持つため、厚生労働省が適応の拡大に後ろ向きのようですが、ビバンセは欧米では成人に対しても第一選択薬になっています。

 日本で最も多く使われている「コンサータ」(一般名:メチルフェニデート塩酸塩)より有効性が高いという報告も見られ、成人にも適応が拡大されれば、コンサータが効かない患者さんにとっては貴重な治療の選択肢になるでしょう。(談)

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