日本のキャッシュレス化は「決済ブランドの乱立」が壁に?

 2010年代の中盤以降、中国では一気にQR決済が進んだことは上述したが、盧氏によれば、「全国的な普及は、中国でのQR決済の手段がAlipay、Wechat Pay、銀聯の三つに限定されていたため」だという。

 一方、日本では、PayPay、楽天ペイやVISAを筆頭としたクレジットカード、また交通系ICカードなど50以上の決済ブランドがある。

「この決済ブランドの乱立こそが、日本のキャッシュレス化を阻害しています」と盧氏は言う。

 経済産業省によると、日本の2021年のキャッシュレス決済比率はわずか32.5%であり、世界最高水準とされる8割(中国は83%)には及ばない。内訳は、クレジットカードは27.7%、デビットカードは0.92%、電子マネーは2.0%、QRコード・バーコードを含むコード決済はわずか1.8%だ。
 
 確かに小売りや飲食など店舗側からすれば、決済ブランドごとにシステムを開発するのは骨が折れる。もっとも最近は決済代行も進み、店舗が代行業者と契約することで、利用者は支払時に使いたい決済ブランドを選択できるようになったが、それでも店舗側に専門人材がいない場合は対応に苦慮することもある。

 そこで、乱立する決済ブランドを一元化し、さらにオンライン決済と実店舗決済も一元化したのがELESTYLEのサービスだ。同社のプラットフォームを経由すれば、店舗はスマホの管理画面の操作だけでさまざまな決済手段を使えるようになり、端末などハードの設置や操作、専門人材が不要になるほか、システム連携も簡単なものになる。

 盧氏は2003年に来日し、日本での生活は今年で20年になる。来日当時の印象を「Suicaで乗れる日本の鉄道に驚かされ、世界初のIP接続サービス『iモード』に目を輝かせた」と語る。その後楽天に在籍し、MBAも学ぶなどして、日本での経験を積み上げた。

 そんな日本も、2010年には中国によって経済大国2位の座を奪われた。中国は、家電製品のみならずスマホでさえも自前で製造できるようになり、スマホ決済や顔認証技術も日本の先を行くようになった。

「米国や日本のビジネスモデルが中国で成功するというのは一昔前の話で、すでに中国の成功モデルが米国や日本にもたらされる時代が始まっています。その成功のカギは現地事情に合わせた展開にあるといえるでしょう」と盧氏は話す。