介護費用と葬儀費用の総額は?

 生命保険文化センターによれば、介護期間は平均61.1カ月(約5年1カ月)だ。

 また、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)のうち、住宅リフォームや介護用ベッドの購入など一時的にかかった費用は平均合計74万円で、月々の介護費用は平均8.3万円となっている。

 つまり、介護費用は1人当たり平均581万1300円かかる計算で、2人分だと1162万2600円となる。

 葬儀費用も必要だ。鎌倉新書によれば、葬儀費用の平均総額は約110万7000円で、その前の調査では約184万円だった。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、「家族葬」「直葬・火葬式」が増加し、「一般葬」が減少。つまり、葬儀がコンパクト化して費用が減った。逆に言えば、今後はまた一般葬が増えて、葬儀費用は上がる可能性がある。

 ここまでをまとめると、65~90歳の25年間で必要となる費用の総計は、1939万4100円が見込まれるというわけだ。

最重要となる65~74歳の計画

 一方で、貯蓄はどれくらいが目安になるのか。

 総務省によれば、2人以上の世帯のうち世帯主が65歳以上の世帯では、貯蓄現在高が2500万円以上の世帯が約3分の1を占める。平均貯蓄額が2376万円で、額の低い方から数えた真ん中の世帯の額(中央値)は1588万円だ。

 諸費用を考えると、豊かな老後を送るためには、貯蓄額を2000万円以上にしておきたい。

 次に、夫婦での旅行や買い物、会食などでお金を使い切りながら、老後を豊かにするための「三つのチェックポイント」を見てみよう。

 一つ目は、65~74歳の10年間の計画が最重要となる点だ。

 65歳時点で2000万円以上の貯蓄が見込めるなら、年金受給年齢を75歳に繰り下げるという選択肢もある。10年間は貯蓄だけで頑張れば、75歳以降は月々の収入が増えて生活が楽になる。

 年金収入が、額面で年180万円(月15万円)の世帯なら、75歳に繰り下げれば年151.2万円が加算され、75歳以降の年金額は額面で331.2万円(月27.6万円)と約1.8倍になる。

 無論、「早く亡くなれば年金を受け取れず、繰り下げたら損してしまう」という意見もあるだろう。そのあたりは、今の健康状態などを見ながら考えるしかない。

 二つ目は、消費支出の動向だ。今後、物価高などで食料費や光熱・水道費はもっと負担が増える恐れがある。

 住居費は、住宅ローンを払い終えた人なら管理費などの1万~2万円程度で済むが、賃貸なら月額はもっと多い。「持ち家でも修繕積立費の思わぬ上昇や、設備の劣化によるリフォームといった急な出費に要注意」(風呂内氏)だ。

 なるべく出費を抑えるなら、今は格安の携帯電話や旅行もたくさんあるから一度検討してみよう。

 三つ目は、見落としがちな介護と葬儀だ。

 介護費用は25年間の生活費よりも高くなる恐れがある。葬儀費用は思わぬ出費となるため、別で積み立てておくのが吉。今は健康だとしても要注意だ。

Key Visual by Kaoru Kurata, Hitomi Namura, Graphic:Daddy’s Home