時代の寵児ともてはやされてきた、来店型保険ショップ最大手のほけんの窓口グループの業績が低迷している。親会社の伊藤忠商事は、少数株主を排除するスクイーズアウトを行い、40社超のフランチャイズ企業にロイヤルティーの大幅アップを迫るなど、強権を発動している。特集『[激変]生保・損保・代理店 保険大国の限界』(全22回)の#1では、激変する窓口の内側をレポートする。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
ほけんの窓口の店舗で異変勃発
ライバル会社の看板に入れ替え
4月下旬、千葉県市川市にあるほけんの窓口グループ(以下、窓口)のある店舗で異変が起きた。窓口と同様に来店型保険ショップを全国展開する競合の「保険見直し本舗」の看板に、突如入れ替わったのだ。窓口には寝耳に水の事態であり、社内は一時騒然となった。
この店舗は窓口の直営店ではなく、フランチャイズ店(窓口ではパートナーと呼ぶ)。要は、この店舗を運営するパートナー企業が窓口に反旗を翻し、ライバル店にくら替えしたというわけだ。
窓口には、パートナー企業が約40社あり、全国約800店舗のうち、パートナー企業が運営する店舗は約260店舗に上る。窓口創業時に資金面などで支えてきた企業が大半で、二十数年にわたり窓口と共に成長してきた仲間だ。
ところが今、これらパートナー企業が苦しい立場に追い込まれている。詳細は後述するが、窓口がロイヤルティーの大幅アップや、事業譲渡などに関する厳しい条項の締結などを求めているためだ。冒頭のパートナー企業の離反はまさに、これらが理由だ。
むろん、そこに窓口の親会社である伊藤忠商事の意向が強く働いていることは言うまでもない。では、そこまでしてパートナー企業を追い詰める理由は何か。最大の理由は、窓口の業績が低迷しているからに他ならない。下図をご覧いただきたい。
過去7年連続で増収増益を続けてきた窓口は、2022年6月期に大幅な減収減益となった。ショッピングモールなどに出店している窓口の店舗で、新型コロナウイルスの感染拡大により来店客数が大幅に落ち込んだためだ。その後、新型コロナの終息が近づいてきた中でも来店客数はさほど回復せず、今期も予想を達成するのは困難な状況だ。
理由は、主力の医療保険などの販売落ち込みで手数料収入が減少していることや、すでに全国に約800店舗を出店しており新規出店の余地がもはやほとんどないこと。また、テレビコマーシャルなどマスマーケティングを通じて顧客の来店促進を行ってきたが、インターネットに慣れ親しんだ30代や40代の層には響かず、思うように来店客数が伸びなくなっていることなどが挙げられる。
要は、これまでの成功体験が通用しなくなったのだ。何より収益低下に危機感を覚えた伊藤忠や、伊藤忠出身者で固められた窓口の経営幹部たちは、大幅なてこ入れに踏み切り、パートナー企業に対しても厳しい要求を突き付けたというわけだ。
昨年11月と12月に開催された、パートナー企業の社長たちを集めた「オーナー会議」では、窓口側が突き付けた条件に対して不満が爆発。次ページでは、そのさまをレポートするとともに、伊藤忠の完全支配下での窓口の変節について述べていこう。