建設・不動産業界なら
1級建築士で「50万円」

 一例として、大和ハウス工業の祝い金の金額を見てみよう(下表参照)。

 同社は建設・不動産会社のため、1級建築士50万円、第1種電気主任技術者20万円、不動産鑑定士20万円、公認会計士20万円、1級建築施工管理技士15万円、土地家屋調査士15万円、税理士15万円、建築設備士12万円、社会保険労務士10万円、宅地建物取引士10万円といった具合に、建築技術系、不動産系の資格については祝い金の金額が高めに設定されている。公認会計士や税理士、社会保険労務士といった難関資格も、取得費用がかかり希少性もあることから比較的高めだ。建設・不動産業界なら、おおむね相場は似通っているという。

 取得費用、難易度や希少性の違いから、建築技術系については1級と2級で大きな開きがある。2級建築士だと5万円、2級建築施工管理技士だと3万円だ。またTOEIC(R)のような語学系資格については、800点以上なら10万円、900点以上なら15万円といった形でスコアによって金額が上下する。

 転職する人の中には、「仕事が忙し過ぎて、会社にいる限り資格を取れない。だから退職しようと思った」という人や、「会社を辞めてから資格を取り、そこから転職活動を始めた」という人もいる。

 資格試験の対策は専門学校へ行くなど、基本的には自分で対策するしかない。ただ企業によっては、仕事で必要な資格を取る場合、その人の業務負荷を減らすように配慮するケースもある。「会社を辞めてキャリアを中断してまで資格を取るのは良くない」と考えているような会社では、むしろ部下に資格をきちんと取らせることが上司のマネジメント能力として評価されるのだ。

 資格取得でキャリアアップを目指す場合、お金の面だけではなく、勤務先での取得体制がどれだけ整備されているかも見極めておきたい。

教育訓練給付制度で国から
「最大224万円」が支給される

 ある介護系資格の取得を目指す女性は、「ハローワークへ相談に行ったとき、初めて教育訓練給付制度の存在を知った」と話す。最近では、「新型コロナウイルスの感染拡大により飲食店に勤められなくなった人が看護師を目指したり、経営能力を身に付けたい医者がMBA(経営学修士)を取ったりするためにこの制度を使っている」と、あるキャリアコンサルタントは話す。

 教育訓練給付制度とは、働く人のキャリア開発を支援する制度で、対象講座ごとに「専門実践教育訓練」「特定一般教育訓練」「一般教育訓練」の三つに区分されている(下表参照)。

 専門実践教育訓練では、介護福祉士などの業務独占資格、デジタル関係、大学院や専門学校などが対象の講座で、給付率は受講費用の50~70%、年間上限金額で40万~56万円を最大4年(224万円)まで、ハローワークから支給される。

 同様に特定一般教育訓練では、介護職員初任者研修、大型自動車第一種・第二種免許などの業務独占資格、デジタル関係が対象の講座で、給付率は受講費用の40%(上限20万円)。一般教育訓練では英語検定や簿記検定といった資格取得を目標とするものや大学院などが対象の講座で、給付率は受講費用の20%(上限10万円)となっている。

 受給する際の注意点として、受講開始時点で雇用保険に加入中、もしくは離職後1年以内であることが必要だ。その上で、初めて教育訓練給付金を受ける人は、雇用保険の加入期間が、専門実践教育訓練なら2年以上、特定一般教育訓練と一般教育訓練なら1年以上などの条件がある。2回目以降に給付金を受ける人なら、前回の受講開始から雇用保険の加入期間が3年以上必要だ。なお、離職後1年以上たっている人には「求職者支援訓練」など他の支援策がある。

 対象講座については、三つの区分を合計すると約1万4000講座ある。専門実践教育訓練と特定一般教育訓練では、受講前にハローワークでキャリアコンサルタントからコンサルティングを受ける必要があるなど、資格ごとに細かくルールが決まっている。そのため自分がどこに当てはまり、どんな手続きが必要か詳しく知りたければ、ハローワークに一度問い合わせてみよう。

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