対話で分かる地政学#4Photo:Jub Rubjob/gettyimages

地政学を理解する三つ目のポイントが「勢力均衡」という考え方だ。英国や米国をはじめとする世界の覇権を握った国が採る超重要戦略を解説する。特集『対話で分かる地政学』(全14回)の#4は、地政学の“第一人者”である奥山真司氏が、地政学の基本その3を分かりやすく解説する。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希、監修/地政学・戦略学者 奥山真司)

「週刊ダイヤモンド」2023年10月21日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。登場人物は実在の専門家を除き、架空の設定です。

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動物園の猿山に学ぶ地政学の基本
世界覇権の鍵にぎる「勢力均衡」

母:大屋 恵(めぐみ)

 先生の案内通りに目的地に着いたわよ。でも、ここって……。

講師:奥山真司(おくやま・まさし)

奥山 そうです。動物園です。たまには、こういう所もいいでしょう。

次男:大屋 陸(りく)

 うわー、動物園って久しぶりだな。小さい頃にみんなで来たよね。でも、動物園と地政学に何の関係があるの?

講師:奥山真司(おくやま・まさし)

奥山 ほら、皆さんこちらに来て、あれを見てください。

祖父:大屋 明(だいや・あきら)

 猿じゃな。うわ~、おいしそうにリンゴを食べてる猿もいるのう。こちらも腹が減ってきたわい。

講師:奥山真司(おくやま・まさし)

奥山 ここでちょっと一息。しばらくのんびりと猿たちの様子を見てみましょうか。

次男:大屋 陸(りく)

 なんだか態度が大きい猿がいるね。その周りの猿は大きな猿に気を使っているみたいだね。はぁー……。

講師:奥山真司(おくやま・まさし)

奥山 あら、陸くんため息をついてどうしました?

次男:大屋 陸(りく)

 ボス猿とほかの猿たちを見ていたら、学校を思い出しちゃったよ。うちのクラスに女子の学級委員長がいるんだけど、なんでも仕切るんで苦手なんだよな。そもそも僕より身長も高いし……。

 こないだは、みんなの前で「大屋くん、ちゃんと掃除はやりなさい」だもんね。恥ずかしかったよ。

祖父:大屋 明(だいや・あきら)

 陸も父親やわしに似て、女性には頭が上がらぬようじゃな。

母:大屋 恵(めぐみ)

 まったくお義父さん、ふざけないでください。

講師:奥山真司(おくやま・まさし)

奥山 まあまあ。実はこの猿山にも陸くんのクラスにも、地政学では重要となるポイントが隠されています。それが英語では「バランス・オブ・パワー」という「勢力均衡」の概念です。