JR東日本、株式上場から30年「公共性と企業性」に揺れた歴史とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

国鉄分割・民営化で発足したJR7社のうち、JR東日本が先頭を切って上場したのが1993年10月26日。それから丸30年がたった。JR上場の30年の歴史を振り返る。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

JR本州3社は
初年度から黒字を記録

 1993年10月26日のJR東日本株式上場から30年が経過した。同社は国鉄改革のもと1987年に「民営化」したが、この時点では完全な民間会社ではなく、「旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(JR会社法)」に基づき設立された、政府が全額を出資する特殊法人であった。

 末期の国鉄は毎年1兆円以上の赤字を計上。約37兆円に達した国鉄長期債務は、JR本州三社とJR貨物が計約5.9兆円、新幹線保有機構が約5.7兆円(後に各社が買い取り)を継承。残りは国鉄清算事業団が処理することになったが、最終的に約24.1兆円が国民負担となり、現在も約15.5兆円の債務残高が残る。

 どん底から出発したJRだったが、本州三社は初年度から黒字を記録し、サービス向上、増収努力、生産性向上の「民営化効果」に、世間は驚いた。元より「事業の健全かつ円滑な運営を阻害しない範囲」で債務を継承したのだから、いわば約束された黒字だったのだが、いずれにせよ本州三社が営利企業として成り立つことが見えてきた。