年内の衆院解散見送りで新政局、鍵を握る「長老80代」3人の思惑衆院本会議場で空席のままの前衆院議長、細田博之の座席。細田、自民党の元政調会長の保利耕輔、元農相の若林正俊が相次ぎ他界した。今後の政局では、この3人とは異なる3人の長老が鍵を握る Photo:JIJI

 11月に入って政治家の訃報が相次いだ。大きなニュースになったのは前衆院議長の細田博之(79)。10月20日の臨時国会召集直前に体調不良を理由に議長を辞職したばかりだった。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係が取り沙汰され、議長辞任の記者会見でもそのことに質問が集中した。

 しかし、細田はぬらりくらりと切り抜け、多くを語ることはなかった。細田の死去で衆院島根1区の補欠選挙が来年4月に実施されることが確定した。この時期は来年1月召集の通常国会開会中に当たる。岸田内閣の支持率低下が続いていれば、補選を軸に政治の流れが大きく変わる可能性がある。

 細田と前後して自民党の元政調会長、保利耕輔(89)と元参院議員で元農相の若林正俊(89)が他界した。保利は名衆院議長として名を残す保利茂の長男。寡黙で剛直な人柄は父譲りだった。若林は稀にしかないことで話題になったユニークな政治家として知られた。3回の農相就任のうち2回は前任者の自死と辞任を受けてのピンチヒッター。2010年の参院本会議では欠席した隣席の青木幹雄(故人)の投票ボタンを押すという前代未聞の行動で議員辞職した。

 往年の議員が次々と鬼籍に入る中で、首相の岸田文雄を取り巻く長老政治家たちは衰えるどころかむしろ活発な動きを見せる。

 元首相の森喜朗(86)もその一人だ。8月末に腰の圧迫骨折をして一時期入院していたが、10月末に車いすを使いながらも再始動した。内閣支持率が低迷し、年内の衆院解散の見送りを決めた岸田に電話でエールを送った。