エネルギー動乱Photo:PIXTA

4月に先進7カ国のエネルギー・環境担当相会合が札幌で開催された。多くのメディアは「石炭火力廃止の時期が明示されなかった」「原子力が選択肢の一つとして認められた」「天然ガスも削減対象に含まれた」などと報道。しかし、これらの報道は、いずれも「的外れ」だと言わざるを得ない。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では的外れだと指摘した根拠に加え、真に注目すべきだった点を解説する。(国際大学副学長・大学院国際経営学研究科教授 橘川武郎)

35年のGHG削減目標「19年比60%削減」
世界は「日本の国際公約」と受け止め

 5月に広島で開催されたG7(先進7カ国首脳会議)に先立って、4月には先進7カ国のエネルギー・環境担当相会合が札幌で開催された。

 この札幌会合について多くのメディアは、「石炭火力廃止の時期が明示されなかった」や「原子力が選択肢の一つとして認められた」、「天然ガスも削減対象に含まれた」などに重点をおいて、報道した。

 しかし、それらの報道は、いずれも「的外れ」だと言わざるを得ない。取り上げた論点に、目新しい内容は何も含まれていないからである。

 先進7カ国のエネルギー・環境担当相による札幌会合の「肝」は別にある。同会合の共同声明に、2035年の温室効果ガス(GHG)排出削減目標について、「19年比60%減」という数値が盛り込まれたことこそが「肝心要」なのである。

 今のところ、経済産業省や環境省の関係者は、この「35年GHG排出19年比60%削減」の目標は「国際公約ではない」と言い張っている。しかし、この言い分は、世界で通用するだろうか。

 議長国である日本が共同声明に明記された内容に対して、「あれは言及しただけであって約束ではない」と言い繕うことが、国際的にまかり通るとは到底思えない。

 早晩、「35年GHG排出19年比60%削減」目標は、日本の新しい国際公約と見なされることになるだろう。すでに海外では、そのような見方が広がり始めている。