これは2021年度の収益認識会計基準適用により旅行業の収益の計上が変わった影響で、見かけ上のものだ。ただ影響が小さい営業利益で比較すると、2019年同期は約0円だったのが、今期は全国旅行支援による旅行需要の押し上げとインバウンド需要の回復を背景に約65億円の営業黒字を計上しており、貴重な収益源として成長しつつあるのは事実だ。
運輸と不動産・ホテル事業が
ともに好調なJR九州
残る上場会社であるJR九州は元々、運輸セグメントの比率が低いためコロナの影響も小さかった。今回の決算ではもう一方の柱である不動産・ホテルセグメントが引き続き堅調なのに加え、運輸セグメントの業績が大幅に回復したため、業績は上々だ。
連結営業収益は対前年同期比12%増の約1907億円、営業利益は同140%増の約268億円で、それぞれ2019年同期比90%、89%の水準だ。経常利益は同90%の約280億円、約279億円の最終黒字となった。
JR九州単体の鉄道旅客運輸収入は、旅客需要の回復に加え、西九州新幹線(武雄温泉~長崎間)が2022年9月に開業した影響もあり、前年同期の約554億円から約704億円へ、約150億円の増収。それでありながら営業費用はほぼ変わらなかったため、増収分が増益に直結した。
不動産セグメントでは11月10日に長崎駅ビルが開業。今年度内には長崎マリオットホテル、また、東京初進出となる分譲マンション「MJR深川住吉」が竣工するなど、さらなる拡大を計画している。
最終黒字化でも喜べない
JR北海道とJR四国
正式な決算公告ではないが、経営再建途中のJR北海道、JR四国が国土交通省に提出した報告書も見てみよう。
JR北海道の連結営業収益は対前年同期比13%増の約738億円で、約174億円の営業損失だったが、営業外利益が約229億円で経常利益は約54億円。さらに特別利益約75億円を計上し、約117億円の最終黒字となった。
黒字というと意外に感じるだろうが、内訳を見ると手放しでは喜べない。JR北海道とJR四国は鉄道事業の赤字を穴埋めする経営安定基金を計9000億円(経営支援としての積み増し分含む)以上保有しているが、基金の一部を独立行政法人鉄道・運輸機構に利率5%で貸し付け、受取利息を計上する経営支援が行われている。