──そのほかにも、黎明期にはサイバーエージェントやLINE、スタートアップなどがフリマサービスを手がけてサービスをクローズしました。あらためて何が生き残りの理由でしょうか。

先ほども世界一周の話をしましたが、例えば新興国で資源が限られているのを見てきたといったような体験は、1つのきっかけにすぎないのではないかと思っています。

その前に(米ソーシャルゲーム会社の)Zyngaにウノウを売却していますが、Zyngaの中では、彼らのデータの扱いのうまさを見ました。A/Bテストやユーザビリティテストなど、今でいうAIにつながるようなやり方、会社の仕組みではストックオプションや買収のやり方などもそこで学べました。もっとさかのぼると、1999年に楽天のオークション事業をやらせてもらいました。その後ヤフオク!にこてんぱんにされましたが、CtoC事業の面白さはその時に知りました。

そうしたCtoCの面白さと、ゲームやアプリを作った経験、エンジニアリングの経験などが組み合わさって、何かをやるときに「こうしたらうまく行くんじゃないか」という仮説にたまたまかみ合っていたというか。

それで「Connecting The Dots」(点と点をつなぐ:スティーブ・ジョブズがスタンフォード大学の卒業式で行ったスピーチに出てくるフレーズ)した世界で、いいチームが作れたことそして資金調達ができたこともあります。そういったことをやった積み重ねがあるからできたということもあるかもしれません。ですが、それも含めての結果です。

創業10年を迎えたメルカリ・山田氏が語る過去と未来──「まだ満足はしていない、これからが楽しみ」
 

後から見たら必然のように見えるんだけど、その当時でいえば道を踏み外す機会はいくらでもあったでしょう。そういう意味での運みたいなものも、すごく強かったと思います。たまたま、いろんな経験がConnecting The Dotsしてここに至る、みたいな。

プロダクトがあったから調達もできて人も集まったということはありますから、そういう意味ではプロダクトが起点だと思います。ただ、全然違うシナリオで違う歴史もあり得たんじゃないかと思います。

やっぱりスタートアップだからダメ元で大胆なことをやろう

──例えばヤマト運輸とのパートナーシップ(ヤマト運輸との連携により「らくらくメルカリ便」が実現した)などは、当時のスタートアップでは考えてもできないことだったと思います。そういった「やり切る組織」、あるいは意思決定の仕方をどう作っていきましたか。

今でも覚えていますが、初めてヤマト運輸に行ったのは、2014年の冬で、とても雪が降った日でした。詳しくは小泉さん(メルカリ取締役President(会長)の小泉文明氏)に聞いてほしいんですが、僕も「ヤマト運輸がそんなスタートアップとは組まないでしょう」と言っていて、それでも小泉さんが「とりあえず会いに行きましょう」といって設定した面会だったんです。実際、そのあと1年ぐらい動かなかったんですが。