自身としても、この機運で何かを残せない限り、将来の日本は生き残れないという当事者意識をもって、微力ながらも貢献していきたい。

グローバル・ブレイン 代表取締役社長 ジェネラルパートナー 百合本安彦

日本は「失われた30年」と言われるように、ここ30年間のGDPは米国や中国などの諸外国と比較して成長できていない状況です。今回発表された「5か年計画」は、スタートアップの新たな価値創造によって日本経済を浮上させていくという動きであり、大いに賛同すべきです。

「5か年計画」では、2027年までに日本のスタートアップ投資額を10兆円にまで押し上げる目標を立てています。一見すると10兆円という金額は膨大で非常に高い目標のように見えますが、スタートアップ投資額を対GDP比で見た場合、10兆円という金額はようやく諸外国並の水準であり、必要なレベルの目標だと考えます。

しかし、スタートアップ投資が他国に比べ一般的でない日本で、その裾野を広げるのは簡単なことではありません。10兆円までスタートアップ投資額を増加させるには、資金の出し手も同時に考える必要があります。日本ではVCへの出資者は銀行と事業会社が過半を占めていますが、米国では年金基金、大学基金や各種財団、ヨーロッパ諸国では政府系機関による出資割合が高く、日本より多様な出資者で構成されています。「5か年計画」でも政府系金融機関によるスタートアップ投資の増加、年金基金、公的資金によるVCへの出資に言及されていますが、出資者の多様化によるVC市場の拡大に期待しています。

また、「5か年計画」では公的機関がスタートアップからのサービス、物品等の受注を増やす施策についても言及されていますが、これはスタートアップに直接的な収益機会を与えるだけでなく、公共機関での利用という信用を与えることにより、民間向けのビジネス拡大にも貢献できる施策だと思います。

さらに「5か年計画」では将来的にユニコーンを100社誕生させる目標が掲げられていますが、ユニコーンを諸外国並みに増やしていく方針には賛成です。ポイントは、現環境下で具体的にどのように増やしていくかの戦略が必要ということです。この目標を達成するためには、スタートアップが日本国内市場に留まらず、積極的に海外の成長市場に打って出る必要があります。海外投資家の呼び込みや海外エコシステムとの接続強化は、スタートアップ投資の増加のみならず、スタートアップの海外ビジネス拡大にとっても重要な施策であると考えます。