総予測2024#5Photo by Kiyoshi Takimoto

消費者物価上昇率は前年比で、日本銀行が目標とする2%超えが続いている。YCC(イールドカーブコントロール、長短金利操作)やマイナス金利の行方に注目が集まる。特集『総予測2024』の本稿では、前日本銀行副総裁である若田部昌澄・早稲田大学政治経済学術院教授に今後の物価動向、金融政策の行方について語ってもらった。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)

物価上昇率2%超えが続く
インフレの程度を判断する状況

――足元の物価動向をどうみていますか。

(生鮮食品を除くコア)消費者物価指数の前年比上昇率は目標である2%を超える状態が続いています。日本銀行が物価の基調を判断する指標である、消費者物価指数の加重平均値、中央値、最頻値も全て2%を超えています。

 横軸に上昇率を取り、品目数を縦に取ってみると、台形のような形になります。ゼロ%付近が中心ですが、5%、10%あたりの品目数も増えています。デフレ一辺倒ではなくて、どの程度のインフレかを判断する状況だと思います。

若田部昌澄わかたべ・まさずみ/早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院経済学研究科、トロント大学経済学大学院博士課程単位取得退学。2018年3月から23年3月まで日本銀行副総裁を務める。 Photo by K.T.

 企業の販売価格予想を見ると、1年後、3年後、5年後のいずれも上昇率は2%を超えています。市場が想定する期待インフレ率は1%台前半ですが、2014年以来の高い水準にあります。

 植田和男・日銀総裁が使っている言葉で言えば、輸入物価上昇によるコストプッシュを意味する第一の力が、主に今物価上昇をもたらしています。それが第二の力であるディマンドプル(需要増による物価上昇)、賃金と物価の好循環へとつながり、上昇が持続する可能性が高まっています。ただ、これで安心というところまでは至っていません。

デフレ一辺倒ではなくなったという認識を示す若田部氏。次ページ以降、2%物価目標達成のための条件、賃上げの行方、金融政策正常化に向けての日銀の24年の動きなどについて語ってもらった。