海外金利の上昇により銀行窓口での外貨建て保険の販売が好調だが、苦情の多さや回転売買を行っているのではないかとの疑惑が浮上。金融機関に対する金融庁の視線が厳しくなり、販売停止を決断する銀行が増えている。一方、国内金利の上昇により円建ての保険にシフトする銀行も見られ、銀行窓販に地殻変動が起きつつある。特集『金利で明暗! 銀行絶望格差』(全16回)の#5では、それら銀行窓販を巡る動向を解き明かしていく。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
銀行窓口での保険販売に異変!
外貨建て保険の相次ぐ販売自粛
米ドルなど海外金利の上昇に伴い、銀行窓口での販売が急増している外貨建て保険に、異変が生じている。販売自粛に踏み切る銀行が出始めているのだ。
外貨建て保険とは、契約者が支払った保険料を金利の高い米ドルなどで運用するもので、日本銀行によるマイナス金利政策により円金利がほぼない状態が続く中、人気の保険商品となっている。多くの銀行にとっても、100万円単位で保険料が払い込まれる外貨建て保険は多額の手数料収入を得られるため、こぞって販売に傾倒していた。
もっとも、「保険に加入したとは思っていなかった」「解約したら元本を割り込んでしまった」などの苦情が相次ぎ、近年は「仕組み債」と呼ばれる高リスクな金融商品の販売にシフト。2020年度下期には、主要行と地方銀行の合計で約1兆円に上る仕組み債を販売していたほどだった。
ところが、仕組み債は株価や金利などを組み込んだ複雑なデリバティブ(金融派生商品)で、大損するリスクをはらんだ商品。にもかかわらず、リスクの説明をろくに行わないまま高齢者などに販売していたとして、昨年6月に金融庁から大目玉を食らってしまった。その後、仕組み債の販売額は大幅に減少したが、代わって再び台頭してきたのが、外貨建て保険だ。
この外貨建て保険については冒頭の通り、昨年後半から販売を停止する銀行が出始めたことに加え、販売量を抑制する銀行も目立ちつつある。
理由は、大きく二つある。一つは、円金利の上昇に伴う円建ての保険商品へのシフト。もう一つは、金融庁が外貨建て保険に厳しい視線を向けていることだ。
次ページでは、外貨建て保険に対する金融庁の本音を探っていくとともに、地銀68行から回答を得た、今後の外貨建て保険の販売見通しについて詳述していく。