ただ、「1000円の壁の崩壊はすでに成った」との見立てもあり、これによって一杯の質の向上や、ラーメンの価格帯の三極化(低価格、1000円前後、1500円以上)の可能性も指摘されている。

 筆者自身、ラーメンは安くあってほしいという感覚があるから、1000円を超す会計になると少しビックリしてしまうことが多かった。

ビジネスモデルが異なる
「高級ラーメン」の新ジャンルも

 しかし徐々に、1000円を超えるラーメン屋はもはや当たり前になったと言っていいほど増えてきていると感じ、そのためラーメン屋に行く機会はかなり減ったが、月に2回ほどのその機会において会計はしっかり1000円を超すし、それに納得できる満足感を得てもいる。そして、似た感想を抱いてラーメン屋に向き合っているご同輩も多いようである。

 我々庶民の感覚は言うまでもなく個人の自由であり、ラーメンが高いと感じるなら食べに行く必要はまったくないし、誰かに何か言われたからといって「ラーメンは安く(1000円以下で)あってほしい」という感覚を修正する必要もまったくない。

 ただし、現在では「以前のように1000円以下でどんなラーメンでも食べられる」という考えが通用しにくくなってきているのも、また事実である。

 1会計ひとり2000円を越すような「高級ラーメン」と称すべきジャンルも最近増えてきている。従来のラーメン店では「客の回転数を上げて薄利多売」が常識であったが、高級ラーメン店ではお客が1時間かけて1食をじっくり味わうなど、ビジネスモデルからして違う。

 つまりは、ラーメンのあり方が多様になってきているということである。これからのラーメンは価格設定がそばや寿司のように幅広くなって、その中で1000円を越す、「ちょっとご褒美感ある1食」というあり方が特別でなくなっていくであろうことは、ある程度覚悟しておいた方が、社会と個人の感覚の間に生ずる軋轢を減らす意味においてはよさそうである。