養老 みんな不愉快かもしれないけど、いちばんありうるシナリオです。明日食べるものに困っているときに「中国のお金を受け取るべきじゃない」と言っても誰も聞きませんよ。背に腹は代えられないというのはそのことです。

東 われわれは災害の起こる国に住んでいる。だから、なるようになる、という考え方しかもてない。そんなわれわれの行く末は属国しかない。それが結論ということになりますが、それでいいのでしょうか。

養老 (笑)

茂木 アメリカの属国の次は中国の属国になると。

養老 独立とはなんだという話ですよね。

東 憲法9条と同じように、「独立」も解釈で乗り越えるのだと。

茂木 たしかに憲法9条はアメリカの属国である実態を表しているものだから、その実態が変わらないなら変えなくてもいいのかもしれないですね。養老先生がおっしゃるように、その実態に政治的に「平和主義」というレッテルを貼っているだけで。

東 現実に日本国内には、主権者である日本国民がコントロールできない外国の軍事基地がいくつもある。ロシアが北方領土を返さないのも、要は米軍基地が北方領土に作られる可能性があるからです。東京上空ですら横田基地の管理下にあって、羽田や成田に行く飛行機のルートも制限されている。ある意味、既に「独立」の意味は変えられているのかもしれません。

隣人であり続ける中国とロシアに
強硬な態度を取り続けていいのか

茂木 いまでもよく覚えているのは、森喜朗さんが首相で、皆から「サメの脳」だとか言いたい放題言われていたとき、養老先生が「茂木くん、昔はああいうことは言わなかったものだよ。外交ってものがあるからね」とおっしゃったことです。いくら反対することがあっても、一国の首相は国益を代表して外国と折衝する立場である以上、そこまでバカにすることはないんだ、と。