自民非主流派が総裁選の主導権?岸田首相が出馬表明する時期は首相の岸田文雄の退陣を要求し、9月に予定される自民党総裁選挙の号砲を鳴らした前首相の菅義偉 Photo:JIJI

 9月に予定される自民党総裁選挙がにわかに動きだした。号砲を鳴らしたのは3年前の総裁選で出馬断念に追い込まれた前首相の菅義偉だった。菅は6月23日公開の文藝春秋のオンライン番組で首相の岸田文雄の退陣を要求した。

「首相自身が(裏金問題の)責任に触れず今日まで来ている。不信感を持っている国民は多い」「このままでは政権交代してしまうとの危機感を持つ人は増えている」

 菅のこのタイミングでの発言について、菅の知恵袋ともいえる閣僚経験者はこう解説した。

「この発言は本音だ。国会が終わったこの時期をずっと考えていた」

 その上で同閣僚経験者は「これが総裁選のスタートだ。これから誰が出馬宣言をしても証文の出し遅れになる」と述べ、菅を軸にした非主流派が総裁選の主導権を握るとの認識を示した。

 ただし、菅と同じく非主流の立場に身を置く党幹部は菅に対して苦言を呈した。

「今回はあまりに軽率だ」

 首相経験者として守るべき矩(のり)を越えたとみているからだ。菅は3年前、現職の総理総裁として迎えた総裁選で続投が有力視されていた。ところが総裁選直前に内閣支持率が急落、菅の地元の横浜市長選では自公候補が大惨敗した。その菅がどん底の状況で、総裁選への立候補を表明したのが岸田だった。自信喪失状態の菅は総裁選に立候補をせずに退陣の道を選択した。そのこともあったのだろう。この3年間、菅は岸田に対して冷ややかな対応に終始してきた。このため菅の退陣要求にはどこか個人的な意趣返しのにおいが漂う。