日本経済の起爆剤となるか?
NTTの次世代技術「IOWN」

 2024年6月18日、半導体大手のエヌビディアの時価総額がマイクロソフトを抜いて世界首位となった(その後、2位に転落)。生成AI(人工知能)の登場によって、これまでスマホでITをけん引してきたアップルやグーグルから、AI基盤企業の代表格であるエヌビディアに、ITの主役が移る象徴的な日となった。

 AIではデータ処理をおこなうデータセンターが重要になる。データセンターの規模がAIの能力を決定すると言っても過言ではないだろう。

 データセンターが需要となる時代で脚光を浴びているのが、光技術を使ったNTTの次世代通信基盤のIOWN(アイオン)だ。

 IWON構想は2019年に発表されたもので、NTTが得意とする光通信技術を応用して、少ない電力と大容量データの送受信を可能にする構想である。NTTの試算では、2030年には現在のインターネットを使う場合と比較して伝送容量は光ファイバーの125倍、遅延も従来の200分の1、電力効率は100倍になるとしており、「6G」の世界標準となりうるものだ。

 データセンターの最大の弱点は大量の電力を消費することであるため、電気の安定供給と電気料金の安さが成否を決めるポイントとなる。その点、IWONは早さとコストの両方を兼ね備えており、普及させるのに理想的な構想なのである。

 NTTは2023年3月にシリコンバレーに近いサンフランシスコで技術イベントをおこない、4キロメートル離れたデータセンターを1000分の1秒以内という驚異的な時間差でつなぎ、あたかも1つの施設にいるかのように運用させることに成功している。IWONの技術があれば複数のデータセンターをつないで、大規模データセンターのように使うことが可能になる。

 IWONを成功させるには、日米連携を中心に複数の有力企業と連携が必要だが、その前段階として、日本政府はNTTを総務省の縛りから解放すべくNTT法改正に着手している。

 新冷戦は再び「技術大国としての日本の復活」を実現しようとしている。それはグローバルの時代においても企業が自社技術を失わずにいたことが大きい。

 これから日本経済は完全復活に向けて進んでいくことを確信している。

(評論家、翻訳家、千代田区議会議員 白川 司)