かつてのゴーン長期政権安定から
経営混乱・業績悪化の時代へ
筆者は、ここ10年ほど一般株主として日産の株主総会に毎年出席している。カルロス・ゴーン元会長時代は、株主会終了後に懇親会が開催されており、ゴーン氏が株主や関係者に愛想良く振る舞っていたほか、大株主であるルノーへの配当を意識したゴーン氏の下、日産が高配当政策を行っていたことで、一般株主も満足していた“平和”な時代もあった。
だが、18年11月に当時、現役の会長であるゴーン氏が突然逮捕されてから、日産は激変の時代に変わった。ゴーン氏の後継だった西川廣人元社長も、19年9月に自らの役員報酬疑惑から辞任したことで、業績の悪化と経営陣の混乱が重なり、その後の株主総会では大きく紛糾する事態となった。
19年12月、中国事業担当で現地に駐在していたダークホースの内田氏が社長に就任した。20年2月には臨時株主総会で西川取締役が退任し、新たに内田社長らが取締役に選任された。
内田日産は、嵐の中スタートを切った。就任から緊張の連続で内田社長の表情にも疲れが表れたのか、目の下のクマが濃く見えることもしばしばだった。さらに、コロナ禍や半導体不足などの経営環境悪化も続いたが、それでも、事業構造改革による業績立て直しを進めてきた。
この間、資本提携先のルノーとの資本関係の見直しが実現し、23年11月に、相互に15%ずつ出資することで長年の議論が決着するという、大きな節目も迎えた。日産は23年12月に創立90周年を迎えたが、四半世紀も続いたルノー支配から対等の関係になり、日仏連合は新たな段階に入った。