その結果、確かに日産の業績は大幅に改善した。

「Nissan NEXT」の最終年度である23年度は、事業構造改革に注力した結果、グローバル販売が344万台(前期比4.1%増)、連結売上高は12兆6857億円(同19.7%増)となった。また、営業利益は5687億円(同50.8%増)、営業利益率4.5%、当期利益4266億円(同92.3%増)となり、3期連続で増収増益となった。

 ただし、内田社長はこの中計の振り返りで、生産最適化で生産能力を20%削減し、新型車12車種投入で高い収益レベルを達成できたとする一方、中国事業の不振もあり販売台数は横ばいにとどまったことで、改革はまだ不十分だと述べた。加えて、「Nissan NEXT」では営業利益率5%以上を掲げたが、実績は4.5%であり未達に終わっている。

 また、コスト削減に走った結果がサプライヤー取引での下請法違反につながったのならば、これも改革の負の側面だといえるだろう。

 新中計「The Arc」は、先に発表している30年に向けた長期ビジョン「Nissan Ambition 2030」への架け橋と位置付け、電動化を加速するほか、パートナーシップや新たな収益機会を活用しながら26年度末までに販売台数を100万台増加させる計画だ。また、営業利益率を26年度までに6%以上を目指すとしている。

 内田社長が就任してから5年弱。一般的な任期を考えれば、この3カ年で社長が代わる可能性が高く、株主総会では「内田社長の後継に若手の抜擢を」という質問も出た。すなわち、新中計はある意味で内田体制の総仕上げであり、内田体制の評価に直結する非常に重要なものだということだ。内田社長も株主総会で「覚悟を持って進めたい」と強調していた。

 とはいえ、新中計を進める上で障壁となりかねない経営課題も多く抱えている。冒頭に陳謝した下請法違反がその一つだ。これは、日産と部品メーカーとの間で長年続いてきた取引関係の根深い問題も背景にある。